
マンションの長期修繕計画は、将来にわたって物件の資産価値を維持につなげるための計画書です。
修繕工事の時期や費用などが記載されており、その内容からマンションが適切に管理されているかどうかの判断材料になります。
今回は、マンションの長期修繕計画とは何か、そして計画書を作成する目的についても解説します。
マンションという大きな資産を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
国土交通省のガイドラインにもとづき、修繕周期の目安も紹介します!
マンションの管理体制について理解したい人は、要チェックですよ!
- マンションの長期修繕計画とは?
- マンションの長期修繕計画を作る目的
- マンションの長期修繕計画書を入手する方法
- 5年ごとが目安!マンションの長期修繕計画の見直しポイント
- 【設備別】マンションの修繕周期の目安
- マンションの長期修繕計画に関するQ&A
- 長期修繕計画はマンションの資産価値を守るために必要
マンションの長期修繕計画とは?

マンションの長期修繕計画とは、将来実施すべき修繕工事の内容や時期、費用などをまとめた計画書です。
建物は時間の経過とともに外壁や屋上、各種設備が少しずつ傷んでいきます。
こうした劣化を放置すると、安全性が損なわれるだけでなく、資産としての価値も下がってしまいます。
大規模な工事が必要になったときに資金が足りなければ、マンションの荒廃を招きかねません。
そこで、建物の質を維持するために、将来の修繕をあらかじめ予測して計画を立てる必要があるのです。
国土交通省が定める「長期修繕計画作成ガイドライン」
マンションの長期修繕計画を適切に作成するための指標として、国土交通省が策定したのが「長期修繕計画作成ガイドライン」です。
統一された基準がなければ、必要な工事項目に漏れが生じたり、積立金が不適切に設定されたりする可能性があります。
全国のマンションで適切な計画作成と円滑な計画修繕が行われることを目的として、2008年にこのガイドラインが策定されました。
2021年に構成が大きく見直され、2024年にも改定が実施されました。
ガイドラインでは、計画期間や修繕項目、修繕周期などが詳しく定義されています。
たとえば、計画期間は30年以上とし、かつ2回の大規模修繕工事が含まれる期間以上に設定することが推奨されています。
参照URL:長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント
修繕積立金・修繕積立基金って何?
マンションの長期修繕計画で、資金の柱となるのが「修繕積立金」と「修繕積立基金」です。
両者の違いは、以下のとおりです。
・修繕積立金……月々の管理費とは別で、各区分所有者が毎月支払うお金
・修繕積立基金……新築マンション購入時・引渡し時などに一括で徴収される初期費用
工事が計画よりも大規模になり、これまでの積立金だけでは資金が不足するときは「修繕積立一時金」として、追加費用を徴収される場合があります。
なお、国土交通省が実施した「令和5年度マンション総合調査」によると、修繕積立金の平均月額は1戸あたり1万3,054円となっています(駐車場使用料等からの充当額を除く)。
マンションの長期修繕計画を作る目的

マンションの長期修繕計画を作る目的は、主に3つです。
・計画修繕を円滑に進めるため
・将来的な工事費用の総額を可視化するため
・修繕積立金の根拠とするため
ひとつずつ見ていきます。
計画修繕を円滑に進めるため
マンションの修繕工事には多額の費用を伴うため、区分所有者の理解と協力が欠かせません。
突然、多額の一時金徴収や大規模工事の実施を求められても、住民の合意を得ることは困難です。
計画書を通じて、工事の実施時期や予算の目安をあらかじめ共有していれば、話し合いがスムーズに進みます。
また、マンションの長期修繕計画は、区分所有者で構成される「管理組合」が主体となって管理します。
明確な計画があれば、管理組合のメンバーが入れ替わっても過去の経緯や今後の予定を把握できるため、引き継ぎに伴うトラブルを防げるでしょう。
将来的な工事費用の総額を可視化するため
マンションという巨大な資産を守るには、将来かかる「工事費用の総額」を把握しておくことが大切です。
12~15年程度の周期で行われる大規模修繕工事では、1戸あたり数十万~百万円以上の費用がかかる場合も珍しくありません。
エレベーターの更新や給排水管の取り換えといった、目に見えにくい箇所の設備メンテナンスにも多額の費用がかかります。
こうした費用を事前に可視化しておくことで、現在の積立金で将来の工事をまかなえるのか、あるいは不足が生じるのかを判断できます。
もし資金不足が予想される場合でも、積立額の改定や工事内容の精査といった対策を、早い段階で講じることが可能です。
修繕積立金の根拠とするため
マンションの長期修繕計画は、毎月徴収する修繕積立金の算出根拠として、重要な役割を果たします。
金額の根拠が曖昧なままでは、負担増に対する住民の不満が蓄積してしまいます。
値上げが必要となった際も、合意を得ることが困難になるでしょう。
一方で「〇年後の大規模修繕工事に×円かかるので、修繕積立金は〇円です」「〇年後の△△交換に〇円の費用がかかるので、今のうちから月額△円上げる必要があります」と数字で示せれば、住民から納得を得やすいです。
マンションの長期修繕計画書を入手する方法

マンションの長期修繕計画書を入手する手順は、すでに物件を所有しているか、あるいは検討段階かによって異なります。
それぞれのケースにおける入手方法について、詳しく解説していきます。
すでにマンションを購入している場合
すでに特定の物件を所有しているなら、管理組合や管理会社に「長期修繕計画書を確認したい」と問い合わせることが可能です。
そのほか、管理組合から配布される、総会資料からも確認できます。
近年では、管理会社が提供する居住者専用サイトやスマートフォンアプリから、PDF形式でダウンロードできるマンションもあります。
まだマンションを購入していない場合
まだマンションを購入していない段階なら、仲介してくれている不動産会社を通じて、売主や管理組合に長期修繕計画書の提示を求めましょう。
特に中古マンションにおいては、計画書が何年も更新されずに放置されていたり、修繕積立金が工事予定額に対して著しく不足していたりするケースがみられます。
「購入後に積立金が急に値上がりした」といったトラブルに直面しないよう、契約前に計画書を見て、管理状態を確認することが大切です。
【長期修繕計画書の主なチェック箇所】
①作成・見直し年月
②計画期間
③修繕積立金残高と今後の収支
④直近・次回の大規模修繕時期
⑤修繕積立一時金の有無
⑥滞納状況
マンションの購入を検討している人は、こちらの記事も要チェックです!
マンション購入で後悔する9つのパターン|体験談から学ぶ事前に確認すべきポイント
5年ごとが目安!マンションの長期修繕計画の見直しポイント

マンションの長期修繕計画は、一度作成すれば終わりというものではありません。
建物を取り巻く環境や劣化具合、経済状況は常に変化しているため、定期的なメンテナンスが不可欠です。
国土交通省のガイドラインでも、約5年ごとに計画を見直すことが望ましいとされています。
ここからは、マンションの長期修繕計画を見直すときのポイントについて説明します。
実勢価格に合わせた工事費の再試算
長期修繕計画の見直しにおいて重要なのが、最新の物価や人件費を反映した費用の再計算です。
原材料価格の高騰や深刻な人手不足により、工事費全体が上昇し続けています。
そのため、当時のままの予算で積み立てを続けていると、資金不足に陥る可能性があります。
実勢価格に即した正確なシミュレーションを行うためには、管理会社またはマンション管理コンサルタントなどに、再試算を依頼するのが一般的です。
また、AIを活用した長期修繕計画シミュレーターを導入する例もあります。
建物の劣化状況に合わせた修繕時期の調整
長期修繕計画に記載されている工事時期は、あくまでも目安です。
実際の建物の劣化スピードは、立地条件や周辺環境、日頃のメンテナンスによって変動します。
たとえば、海に近い物件なら塩害により金属部分の腐食が早まったり、日当たりのよい場所では塗装が急激に劣化したりする可能性があります。
逆に、適切な維持管理によって建物の状態が良好に保たれていれば、大規模修繕の時期を延期できるかもしれません。
専門家による劣化診断を受け、修繕時期を調整することが、資産価値の維持と無駄のない資金運用につながります。
修繕項目の抜け漏れがないか精査する
修繕項目の抜け漏れがないかの精査も、長期修繕計画の見直しポイントのひとつです。
技術の進歩やライフスタイルの変化により、新築時には想定していなかった設備が必要になる、または不要になるケースがあるためです。
宅配ボックスの増設、共用部照明のLED化、電気自動車(EV)普及に伴う充電設備の設置などが検討する項目として挙げられます。
一方で、都市部を中心とした車離れにより駐車場の空きが目立つ場合は、機械式駐車場の撤去が求められる可能性もあります。
【設備別】マンションの修繕周期の目安

国土交通省のガイドラインをもとに、修繕周期の目安を設備別にまとめました。
| 修繕項目 | 周期の目安 |
|---|---|
| 屋上防水 | ・12~15年(補修・修繕) ・24~30年(撤去・新設) |
| 傾斜屋根 | ・12~15年(補修・修繕) ・24~30年(撤去・葺替) |
| バルコニー床防水 | ・12~15年(修繕) |
| 開放廊下・階段等床防水 | ・12~15年(修繕) |
| 外壁塗装 | ・12~15年(塗替) ・24~30年(除去・塗装) |
| タイル張補修 | ・12~15年(補修) |
| シーリング | ・12~15年(打替) |
| 鉄部塗装 | ・5~7年(塗替) |
| 建具関係 | ・12~15年(点検・調整) ・34~38年(取替) |
| 手すり | ・34~38年(取替) |
| 屋外鉄骨階段 | ・12~15年(補修) ・34~38年(取替) |
| 給水・排水管 | ・19~23年(更生) ・30~40年(取替) |
| 貯水槽 | ・12~16年(補修) ・26~30年(取替) |
| 給水・排水ポンプ | ・5~8年(補修) ・14~18年(取替) |
| 自動火災報知設備 | ・18~22年(取替) |
| 昇降機(エレベーターなど) | ・12~15年(補修) ・26~30年(取替) |
| 自走式駐車場 | ・8~12年(補修) ・28~32年(建替) |
| 機械式駐車場 | ・5年(補修) ・18~22年(取替) |
設備ごとに修繕周期の目安が異なるので注意しましょう。
参照URL:長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント
マンションの長期修繕計画に関するQ&A

マンションの長期修繕計画に関するQ&Aを5つ紹介します。
・マンションで長期修繕計画書を作成するのは義務?
・長期修繕計画書がないマンションは危険?
・長期修繕計画書の計画期間は何年?
・マンションの長期修繕計画書は誰が作成する?
・長期修繕計画書のフォーマットは?エクセルで作れる?
それぞれ解説していきます。
マンションで長期修繕計画書を作成するのは義務?
長期修繕計画書の作成について、すべてのマンションにおいて法律上で義務付けられているわけではありません。
しかし、マンションの老朽化を防ぎ、適切に管理するには計画書は不可欠な存在です。
国土交通省のガイドラインでは、管理組合による長期修繕計画の作成・見直しが推奨されています。
また、マンションの適切な管理体制を認定する「管理計画認定制度」においても、長期修繕計画書の作成が認定基準のひとつとなっています。
長期修繕計画書がないマンションは危険?
長期修繕計画書がないマンションには、以下のようなリスクが生じます。
・資金不足により修繕工事を行えない
・物件の快適性が損なわれる
・急に高額な修繕費用を請求される
・物件の資産価値が下がる
・売却が困難になる
計画書がないということは、いつ・いくらのお金が必要になるのかを把握していない状態です。
雨漏りなどのトラブルが起きたときに、修繕積立金が足りず工事ができない、という事態も考えられます。
つまり、マンションを購入する際は、計画書がある物件を選ぶほうが安心です。
計画書の有無に加え、内容・更新状況・積立金の妥当性まで確認しましょう。
長期修繕計画書の計画期間は何年?
長期修繕計画書の計画期間は、ガイドラインにもとづいて「30年以上」かつ「大規模修繕工事が2回含まれる期間以上」に設定するのが一般的です。
計画期間が短いと、長期的な修繕リスクが可視化されず、将来的な負担が把握できません。
たとえば、屋外鉄骨階段の取り替え目安は34~38年です。
もし計画期間が30年だけだと、こうした工事がシミュレーションから漏れる可能性があります。
マンションの長期修繕計画書は誰が作成する?
マンションの長期修繕計画書を作成するのは、管理組合です。
ただし、計画を立てるには専門知識が求められるため、管理組合が管理会社またはマンション管理士などに、作成を依頼する形が基本となります。
作成された計画書は、最終的に管理組合が承認し、その運用に対する責任も管理組合が負います。
長期修繕計画書のフォーマットは?エクセルで作れる?
基本的には、国土交通省が提供している「長期修繕計画標準様式」を利用して、計画書を作成します。
この様式はエクセル形式で配布されており、誰でもダウンロードして利用可能です。
長期修繕計画はマンションの資産価値を守るために必要

今回は、マンションの長期修繕計画とは何か、そして計画書を作成する目的についても解説しました。
長期修繕計画は建物の質を維持し、将来の資金不足を防ぐために作成されます。
具体的な項目や修繕費用などに関しては、国が策定しているガイドラインを参考にしてみてください。
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