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日本語には、単語を組み合わせることで本来とは異なる意味を生み出す表現が数多く存在します。その代表格が慣用句です。
慣用句を正しく理解して使いこなせるようになると、短い言葉でも複雑なニュアンスを伝えられるので、文章にも会話にも深みが増すようになるでしょう。
この記事では、慣用句の意味や使い方を基礎から解説し、よく使われる慣用句をカテゴリ別に紹介しています。間違いやすい慣用句についても取り上げていますので、ぜひ最後までご覧ください。



慣用句とは「2つ以上の言葉で別の意味を表す言い回し」

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慣用句とは、2つ以上の独立した単語が結びつき、セットでひとつの意味を成す定型表現のことです。具体的には、以下3つの特徴があります。

慣用句の特徴
複数の言葉が組み合わさることで意味が生まれる「目」+「高い」
→「目が高い(鑑定力が優れている)」
文字通りの意味とは異なる「首を長くする」
→実際に首が伸びることではなく、「待ち遠しく思う」という意味になる
文章のなかで動詞や形容詞のように機能する「これを選ぶとは、お目が高い」
「首を長くして待っていた」

たとえば、慣用句における「油を売る」という言葉は、文字通りに油を販売しているという意味ではなく「なまけて時間を無駄にする」という意味を持ちます。
また、大きな悔しさを表現する際には、単純に「とても悔しい」と言うよりも、「歯がゆい」「臍(ほぞ)を噛む」と表現したほうが、感情の質感まで伝わりやすくなります。
このように、複雑な感情や状況をより短いフレーズで鮮やかに伝えられる点が慣用句のメリットです。

慣用句とことわざ・故事成語の違い

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慣用句と混同されやすい表現に、ことわざと故事成語があります。いずれも昔から使われてきた定型表現ですが、構造や目的が異なります。

慣用句、ことわざ、故事成語の違いを以下にまとめました。

違い慣用句ことわざ故事成語
構造短いフレーズ一文として完結する熟語または短いフレーズ
目的状況や感情を描写する教訓や知恵を伝える故事の教訓を凝縮して伝える
使い方文の一部として組み込むそのまま一文として使える文の一部または単体で使う
足を引っ張る、腕を振るう猿も木から落ちる、早起きは三文の徳矛盾、五十歩百歩、蛇足

端的に言えば、慣用句は「今の状態を描写するための表現」であり、ことわざや故事成語は「生き方の指針を示す教訓」です。
たとえば、「あの人は腰が低い」という慣用句は相手の控えめな態度のみを描写しています。一方、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざは「偉くなるほど謙虚な姿勢が大切である」という教訓を含んでいます。さらに「大智は愚なるが如し」という故事成語も「本当に優れた人は知識や才能をひけらかさず、謙虚に振る舞う」という教訓を伝えるものです。
このように、慣用句、ことわざ、故事成語はそれぞれ役割が異なるため、場面に応じた使い分けを意識すると、より正確な日本語表現ができるようになるでしょう。

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「体」のパーツを使った慣用句

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慣用句のなかでも数が多いのが、体の部位を使った表現です。とくに目や耳、口といった感覚器官を通じた体験を、感情表現に転用しているものが多くあります。
体の部位によって表す意味にも傾向があり、頭は思考や知性、足は行動や移動、口は言葉や秘密を表すことが多いのが特徴です。

体のパーツを使った慣用句を以下にまとめました。

慣用句意味例文
頭を抱える困り果てて悩む提出日に課題を忘れていたことに気づき、頭を抱えた
目が高い良いものを見分ける力がある骨董市でその皿を選ぶとは、お目が高い
耳にタコができる同じ話を何度も聞かされてうんざりする「早く寝なさい」という親の言葉は、耳にタコができるほど聞いた
口が滑るうっかり言ってはいけないことを言う盛り上がってきたところで口が滑り、サプライズパーティーの計画をばらしてしまった
首を長くする待ち遠しく思う続編の発売を首を長くして待っていたが、結局中止になってしまった
手を焼く扱いに困る、もてあますいたずら好きな弟には、いつも手を焼いてばかりだ
腕が鳴る能力を発揮したくてうずうずする大会前日、去年の悔しさを思い出して腕が鳴った
腰が低い態度がへりくだっている、謙虚である全国大会の優勝経験があるのに、あの先輩はいつも腰が低い
足を引っ張る他人の邪魔をする、進行を妨げる自分だけ練習をさぼっていたら、チームの足を引っ張ることになる

人間の身体感覚に基づいた表現は直感的に理解しやすいため、ビジネスシーンでの状況説明などにもよく使われます。
この他にも「胸が張り裂けそう(悲しみや苦しさで心が痛む)」「腹が立つ(怒りの感情がわいてくる)」など、まだまだ数え切れないほどの慣用句が存在し、日本語の豊かさを支えています。

「動物」が登場する慣用句

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日本人の暮らしに身近だった動物たちも、慣用句に多く登場します。それぞれの動物が持つイメージや習性が、人間の性格や行動を表現する比喩として使われてきました。

動物が登場する慣用句から、とくによく使われるものを下表にまとめています。

慣用句意味例文
猫をかぶる本性を隠しておとなしく見せる先生の前では猫をかぶっているが、休み時間になると別人のように騒がしい
鵜呑みにする他人の言葉をよく考えずにそのまま信じる営業トークをそのまま鵜呑みにして、後悔した経験は誰にでもあるはずだ
馬が合う気が合う、相性が良い班分けで初めて一緒になったのに、なぜか馬が合って話が尽きなかった
鶴の一声権力のある人の一言で物事が決まること行き先が決まらなかった修学旅行の行程も、先生の鶴の一声であっさり決まった

表にある通り、それぞれの動物には「猫=本性を隠す」「鶴=権威」といった固有の役割が与えられています。こうした言葉の背景にある由来をセットで押さえておくと、単なる暗記よりも記憶に定着しやすくなるでしょう。

「道具・食べ物・自然」の慣用句

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日々の暮らしに欠かせない道具や食べ物、そして四季折々の自然現象も、比喩として多くの慣用句に取り入れられています。

身近なものを使った代表的な慣用句を下表にまとめました。

慣用句意味例文
匙(さじ)を投げる解決を諦める何度教えてもルールを守らない弟に、さすがの兄も匙を投げた
棚に上げる自分のことを問題にせず放っておく自分の遅刻は棚に上げて、友達の遅刻を責めるのは筋が通らない
お茶を濁すいいかげんにその場をごまかす「なんで遅刻したの?」と聞かれ、「ちょっといろいろあって」とお茶を濁した
水の泡努力が無駄になる雨で運動会が中止になり、1か月の練習が水の泡になった
風向きが変わる状況や形勢が変化するひとりが賛成に回ると風向きが変わり、クラスの意見がまとまった

「水の泡」や「風向きが変わる」のように、形のない自然現象を使った表現は、不確かさや変化を伝えるのに非常に適しています。

「数字・色・方位」を使った慣用句

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数字や色、方位を含む慣用句は、物理的な数値や方向ではなく、社会的な序列や心理的な距離感を表現しているのが特徴です。

日常でよく使われる数字や色、方向を使った慣用句を以下にまとめました。

慣用句意味例文
一目置く相手の実力を認めて敬意を払う普段は目立たないが、テストになると誰もが一目置く存在だ
赤の他人まったく関係のない人赤の他人の自分がとやかく言える話ではないと思い、黙って見ていた
白い目で見る冷たい目で見る、軽蔑する授業中にスマホを触っていたら、周りから白い目で見られた
右に出る者がいないその分野で最も優れていること暗算の速さに関しては、クラスで彼女の右に出る者がいない

こうした慣用句は、単なる事実の伝達にとどまらず、話し手の主観や評価を交えて伝えるのに非常に適しています。外来語や新語が増えた現代においても、日本特有のニュアンスを共有するうえで欠かせない表現と言えるでしょう。

「家・暮らし」が元になった慣用句

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建築現場や家の構造から生まれた慣用句も、日常のなかに多く溶け込んでいます。家づくりの工程や部材が、人の行動や組織の役割を表す比喩として使われる傾向があります。

由来を知ると意味がおぼえやすいものが多いため、下表では由来もあわせてご紹介しています。

慣用句意味由来例文
いの一番真っ先に、最初に建築現場で柱に振る番号「い−一」が最初であることから新しいゲームが発売されると聞き、いの一番に予約した
敷居をまたぐその家に入る、訪問する家の出入り口にある敷居を越える動作から大きなけんかをしてから、あの子の家の敷居をまたげずにいる
釘を刺す約束を念押しする建築で木材に釘を打って固定することから「絶対に秘密にしてね」と、念のため釘を刺しておいた
埒(らち)が明かない物事が進展しない馬場の囲いである埒が開かない=競馬が始まらないことからじゃんけんで何度やっても決まらず、埒が明かないのでくじ引きにした

普段何気なく使っている言葉でも、その由来を辿ると「家を建てる」という、かつての人々の暮らしに密着した営みが見えてきます。
こうした言葉の由来を少し意識してみるだけで、単なる暗記よりもずっと身近な言葉として、記憶に残りやすくなるはずです。

【要注意】間違いやすい慣用句

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慣用句のなかには、本来の意味と異なる使い方が広まってしまっているものが多くあります。ビジネスや公的な場面では信頼を損ないかねないため、正しい意味を知っておくことが大切です。

間違って使われやすい慣用句には以下のようなものがあります。

誤用されやすい慣用句よくある誤用本来の意味補足
煮詰まる議論が行き詰まり、先に進まない議論が十分に進み、結論が出る段階に至る煮物が「完成に近づく」イメージ。行き詰まりには「暗礁に乗り上げる」が適切
役不足本人の実力が役目に対して不足している本人の実力に対して、役目が軽すぎるへりくだって「私では役不足ですが」と言うと逆に失礼になる。「力不足」が適切
敷居が高い高級すぎる、レベルが高くて気後れする不義理があり、その家・人のところへ行きにくい「高級で入りにくい」なら「ハードルが高い」と言い換える
確信犯悪いとわかっていながらあえて行うこと自分の信念に基づき、正しいと思って行う犯罪・行為本来は「思想犯」に近い法律用語。日常での使い方とは大きくズレがある

言葉は時代とともに変化するものであり、誤用が新たな意味として定着するケースもあります。
とくにビジネスや公的な場面では誤った意味で使うと思わぬトラブルを招くおそれもあるため、正しい用法を知っておくことが大切です。

慣用句を使いこなすメリット

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慣用句には言葉を尽くさなくても、共通のイメージで状況や感情を共有できる点が特徴です。

これらを使いこなすことには、以下3つの大きなメリットがあります。

慣用句を使いこなすメリット
コミュニケーションがスムーズになる「すごく困っている」→「頭を抱えている」と慣用句で表現することで、悩んでいる姿が目に浮かびやすく、コミュニケーションが円滑に進む
相手の意図を正確に受け取れる会話やメールのなかで慣用句が出てきたとき、意味を正しく理解していれば、言葉の裏にある感情の機微を取りこぼさずに相手の温度感を察知できる
表現のバリエーションが広がる自分の気持ちにぴったりくる言葉が見つからないときでも、慣用句という決まったフレーズが引き出しにあると、表現のバリエーションが広がり思考が整理しやすくなる

慣用句をいくつか知っておくだけでも、日々のコミュニケーションがより円滑になります。
慣用句は決して難しい知識をひけらかすためのものではなく、自分の気持ちや、相手が伝えようとしている状況に一番ふさわしい形を見つけるための便利な道具として捉えておくと良いでしょう。

慣用句に関するよくある質問

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ここからは、慣用句に関するよくある質問にお応えしていきます。

慣用句はどのくらいの数がありますか?

慣用句には明確な定義が存在しないため、正確な数は不明です。ただ、慣用句の専門辞典には約3,000語が収録されているものも存在します。
すべての慣用句を暗記しようとする必要はなく、日常やビジネスで頻出するものを押さえておけば、大部分のコミュニケーションに対応できるでしょう。

小学生・中学生が慣用句を覚えるコツはありますか?

慣用句を覚えるために大切なのは、文字面ではなく表現しているシーンを想像することです。
たとえば「足を引っ張る(邪魔をする)」なら、チームメイトの足をつかんで転ばせている場面をイメージするだけで、意味がずっと頭に残りやすくなるでしょう。
また、慣用句の由来を調べることもおすすめです。「匙を投げる(解決を諦める)」が「医者が薬の調合を諦める場面」に由来すると知れば、意味と場面がセットで記憶されやすくなります。
さらに効果的なのが、慣用句を実際に使ってみることです。会話や日記のなかで意識的に慣用句を使うことで、「聞いたことのある言葉」から「使える慣用句」へと変わっていくはずです。

慣用句は英語にもありますか?

英語にも、日本語の慣用句と同じように直訳では意味が読み取れない定型表現(イディオム)が数多く存在します。

英語圏で使われる慣用句には以下のようなものがあります。

英語の慣用句直訳実際の意味
A piece of cakeケーキ一切れ簡単なこと
Once in a blue moon青い月に一度めったにないこと
Break the ice氷を割る場の緊張をほぐす
Spill the beans豆をこぼす秘密を漏らす

文化や生活背景は異なりますが、物を使って状況を表現するという発想は、日本語の慣用句と共通しています。

慣用句を正しく使って語彙力アップを目指そう

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慣用句は、古くから使われてきたフレーズであり、今の私たちの暮らしのなかでも状況を的確に伝えるのに便利なツールです。
「今の気持ちに一番しっくりくるのはどの慣用句だろう?」と少し意識するだけで、コミュニケーションのすれ違いが減ったり、相手の意図を汲み取りやすくなったりするかもしれません。

まずは、今回ご紹介した慣用句から、自分が使いやすいと感じるものを取り入れてみてください。

納得のいく言葉選びが日常を少し快適にするように、納得のいく住まい選びもまた、日々の暮らしに安心感をもたらしてくれます。
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