適正な湿度は何パーセント？簡単にできる湿度を上げる・下げる方法を解説

この記事では、

・部屋の湿度は何％がいいのか
・不適正な湿度で起こる弊害
・湿度を下げる方法と上げる方法
・物件探しや家の新築、リフォームで気をつけるべきこと

など、適切な湿度に関する情報をまとめました。

• 部屋の適正な湿度は40%～60％
• 湿度が適正でない部屋の危険とは？
• 適正な湿度を保つ方法
• 快適な賃貸物件を選びたい！湿度について注意すること
• 適正な湿度を保つために新築・リフォームでできること
• 適正な湿度で快適に暮らそう

部屋の適正な湿度は40%～60％

東京都福祉保健局の健康・快適居住環境の指針によると、快適な部屋の湿度は40～60％とされます。

湿度には相対湿度と絶対湿度の2種類があります。天気予報や湿度計で示される一般的な湿度は相対湿度で、空気中に含むことができる水蒸気の最大限度（飽和水蒸気量）のうち何%を含んでいるかを示しています。

飽和水蒸気量は温度によって変化し、高温になるほど多くの水蒸気を含むことができます。例えば、室温17℃・湿度40％の部屋を、同じ条件のまま室温だけ22℃まで上げると、湿度は30％になります。これは空気中の水蒸気量は同じでも、飽和水蒸気量が大きくなるため、相対湿度が下がることを表しています。

温度と湿度の関係

このように湿度は温度の影響を大きく受けるため、両者のバランスをとることが大切です。
また、湿度は体感温度にも関係していて、同じ温度であっても湿度が高いと暑く、湿度が低いと寒く感じます。そのため、季節によって適正な湿度の値は変化していきます。

気温が高く湿気の多い夏場は、室温25～28℃・湿度50～60％くらいが過ごしやすさの目安です。
一方、気温が低く乾燥しやすい冬場は、室温18～25℃・湿度40～50％くらいが理想的といえます。

●暑さ指数

暑さ指数は「熱中症指数」とも呼ばれていますが、正確には「湿球黒球温度」（WBGT）のことをいいます。

暑さ指数は、

・気温
・湿度
・輻射熱など周辺の熱環境

の3つを取り入れた指標で、熱中症などの危険性を見極める際に役立ちます。

暑さ指数（WBGT）	注意すべき生活活動の目安	注意事項
危険 （31以上）	すべての生活活動でおこる危険性	高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。 外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒 （28～31）		外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒 （25～28）	中等度以上の生活活動でおこる危険性	運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
注意 （25未満）	強い生活活動でおこる危険性	一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

引用：環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは？

暑さ指数は環境省熱中症予防情報サイトで発表されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。（令和5年度は4月26日から10月25日まで実施）

●不快指数

暑さ指数の他にも、快適性を示す指標は複数存在しており、その一つに「不快指数（THI）」があります。
不快指数は気温と湿度から「蒸し暑さ」を割り出した指数で、日本気象協会のサイトで確認できます。

ジメジメと蒸し暑い夏場は、これら2つの指数を頼りにエアコンの使用等を判断するとよいでしょう。

子供や犬の適正な湿度は？

厚生労働省の「保育室における感染症対策ガイドライン」によると、夏は26～28℃・冬は20～23℃・湿度はともに60%が保育室内の目安とされています。赤ちゃんは体温の調整機能や免疫力が大人よりも劣るため、より細かなケアが欠かせません。

犬などのペットを飼う場合も同様です。
人よりも体温が高く、汗で体温調整が行えない犬は、温度・湿度をこまめに調整してあげる必要があります。
飼っている犬種にもよりますが、夏場は熱中症を避けるために室温28℃前後・湿度50～60％の環境をキープしましょう。

参考：公益社団法人 埼玉獣医師会 熱中症に注意しよう！

寝室の適正な湿度は？

寝室の温度・湿度は「寝起きが悪い」「眠りが浅い」といったトラブルの原因になることも。

夏場は体温を冷やし過ぎずに体感温度だけを下げるのがポイントです。
室温28℃・湿度50～60％を目安にエアコン（除湿運転）を設定しましょう。半袖半ズボンのパジャマやタオルケットなど、薄手で放湿性の高い寝具を使うのがおすすめです。

冬場は寝室とそれ以外の場所との温度差に注意しましょう。暖かい所から急に寒い所に移動すると、目が冴えて寝つきが悪くなるもとです。
室温16～19℃・湿度50%前後を目安に、エアコンと保温性の高い羽毛布団や毛布で体を温めつつ、加湿器で湿度を調整するとよいでしょう。

湿度が適正でない部屋の危険とは？

湿度が高すぎる場合の危険

①熱中症を引き起こす

湿度が高いとき、真っ先に注意すべきは熱中症です。
人間は体温が上がりすぎたときに汗をかき、その気化熱で体温を下げる仕組みです。
しかし、湿度が高い状態では汗が乾きにくく、熱を発散できないため、熱中症が起こりやすくなります。

②カビ・ダニが繁殖する

カビやダニは、温度20〜30℃・湿度60％以上のジメジメとした環境を好んで繁殖します。
カビ・ダニを繁殖させてしまうと、アレルギー疾患や呼吸器疾患の原因になり、健康に悪影響を及ぼすので注意しましょう。

参考：暮らしの中のダニ・カビ対策 堺市

③食中毒が起こる

同様に、温度20〜30℃・湿度60％以上の環境では、雑菌も繁殖しやすくなります。食中毒の原因となるサルモネラ菌や腸炎ビブリオなどは、食材を中心部まで充分に加熱することで殺菌可能です。

④結露が生じる

結露は室内外の温度差によって生じやすいです。冬場、室内の暖かい空気が冷たい窓ガラスに近づくことで、空気中の水蒸気が水滴となって窓の表面に付着します。結露をそのまま放置すると、家の傷みやカビの原因になるのでNGです！

湿度が低すぎる場合の危険

①免疫力の低下・ウイルスの活性化

喉や鼻の粘膜が乾燥すると免疫力が下がり、感染症にかかりやすくなります。また、湿度が低い環境で活発化するウイルスも多く存在します。毎年インフルエンザが冬場に流行するのはこのためです。

②肌荒れ・かゆみを引き起こす

空気が乾燥していると、肌の水分や皮脂が減少して、肌荒れやかゆみを引き起こす原因になります。洗顔や入浴で肌の油分を取り過ぎないこと、こまめに保湿することとともに、部屋の湿度を保つことが重要です。

③静電気の発生

湿度の低い環境では、静電気が発生しやすくなります。
静電気はただ不快なだけでなく、パソコンなどの精密機器に故障や誤作動を引き起こすこともあるので侮れません。

④隠れ脱水を引き起こす

「隠れ脱水」とは、冬場の乾燥した空気によって肌から体内の水分が奪われ、汗をかいていないにも関わらず脱水状態になることです。特に、高齢者は喉の渇きを感じにくく、水分摂取を控える人が多いので注意しましょう。食欲不振や頭痛、こむら返り、めまいなどが隠れ脱水の初期症状です。

適正な湿度を保つ方法

部屋の湿度を下げる方法【夏のジメジメ対策】

①換気する・空気を循環させる

部屋の空気が滞ると湿度が上がりやすくなります。定期的に換気して、部屋の空気を循環させましょう。
換気する際は、対角線上にある窓を同時に開けると◎。窓が1つしかない場合には、窓に向けて扇風機やサーキュレーターを回すと効果的です。
また、家具を壁から離して設置するのも、風通しをよくするのにおすすめですよ。

②換気扇を使う

料理や入浴をすると、湿度が急激に上がります。料理をする際は必ず換気扇をつけ、発生する水蒸気を室外に逃がしましょう。また、入浴後は扉を開けっ放しにせず、すぐに換気扇をつけることが大切です。

③部屋干ししない

夏場に室内で洗濯物を干すのも、部屋の湿度を上げる原因になります。外干しができない場合には、洗濯乾燥機や浴室乾燥機を使うことをおすすめします。

▶関連記事
浴室乾燥機付きの賃貸物件のメリット＆デメリットを解説

④除湿機を使う・エアコンを除湿運転する

それでも洗濯物が干しきれなければ、除湿機やエアコンの除湿運転を使い、下から扇風機やサーキュレーターの風を当てて、なるべく短時間で乾かすようにしましょう。

部屋の湿度を上げる方法【冬の乾燥対策】

①加湿器を使う

部屋が乾燥しがちな冬場は加湿器を使いましょう。ホテルなどで加湿器がない場合には、入浴後に扉を開けっ放しにしておくのもおすすめです。

②部屋干しする

冬場は室内の方が暖かく、乾燥対策にもなるため、洗濯物を部屋干しするのもアリです。枕元に濡れたタオルを干すだけでも、喉の乾燥を防ぐことができます。

③石油ストーブやガスファンヒーターを使う

エアコンは部屋の空気を乾燥させますが、石油ストーブやガスファンヒーターは燃焼時に大量の水蒸気を出すため、温度と湿度の両方を上げることができます。これらを使う際は、カーテンなど燃えやすいものの近くを避けて設置し、一酸化炭素中毒を防ぐために定期的に換気を行いましょう。

快適な賃貸物件を選びたい！湿度について注意すること

いくら湿度管理を心掛けても、物件自体に問題があると、どうにもならないことも。ここでは、賃貸物件を探す際に気をつけるべき点を紹介します。

地盤や周辺環境をチェック

物件の立地や条件は湿度と密接に関係します。
戸建てやマンションの低層階は地面に近いため、マンションの高層階よりも湿度が高くなりやすいです。北向きの部屋も湿気がたまりやすいのでご注意を。
また、水はけが悪い土地かどうかも物件選びのポイントになります。建物の基礎にカビやコケのある物件は、避けた方が無難です。
さらに、建物の周辺に川や森、山などがある物件も湿度が高くなる傾向があります。

必要な設備があるか

ベランダや浴室乾燥機などの設備も、湿度対策に欠かせません。
また、風通しのよい位置に窓があるか、窓の大きさは十分かも、あわせて見ておきましょう。

カビの跡はないか

内見の際には、黒いカビの跡がないか、必ずチェックしてください。
湿気がたまりやすい場所は、壁の隅や窓のサッシ、トイレ、浴室、洗濯機置き場、畳の裏側などです。

「べた基礎」で築浅の物件は要注意

「べた基礎」とは、建物の底面全体にコンクリートを流し込んだ基礎のことをいいます。新しいコンクリートは湿気を放出するため、べた基礎で築浅の物件は湿度が高くなりやすいです。

適正な湿度を保つために新築・リフォームでできること

快適な湿度に保つために、マイホームを建てる際やリフォームの際に設備を備えておくのも重要です。
ここでは、室温・湿度管理に役立つ住宅システムや設備を紹介します。

高気密・高断熱住宅

高気密・高断熱住宅は、室温・湿度を一定に保つのに適しています。天井裏や床、壁に断熱材を入れ、断熱ドアや断熱サッシ、断熱窓を取り付ける必要があるので、部分的なリフォームよりも新築時に施工するのがよいでしょう。

24時間換気システム

高気密住宅では、外気温との差で生じる結露を防ぐために、24時間換気システムが欠かせません。2003年の建築基準法改正で、新築住宅に24時間換気システムの設置が義務付けられましたが、既設の住宅においてもリフォームで導入するケースが増えています。

シーリングファン

室内の湿度をコントロールするためには、空気を循環させることが大切です。暖かい空気は上に、湿った空気は下に溜まりやすいので、シーリングファンを設置して空気を攪拌させましょう。シーリングファンは吹き抜けや天井高のある住宅で、その力を最大限に発揮してくれます。

風通しのよい間取り

個室の多い複雑な間取りは、風通しが悪くなりがちです。空気の流れを意識した間取りを組むようにしましょう。日当たりの悪い北側の個室や湿気のこもりやすい納戸には、室内窓をつけることをおすすめします。

調湿建材

調湿建材とは、湿度が高いときには水分を吸収し、乾燥しているときには水分を放出する性質の建材を指します。代表的にはゼオライトや珪藻土、エコカラットなどで、これらは湿度50％前後を保てるようにつくられています。

適正な湿度で快適に暮らそう

湿度の高すぎる環境は不快なだけでなく、熱中症やアレルギー、食中毒など、健康に悪影響を及ぼす危険が潜んでいます。
また、湿度の低すぎる環境でも、免疫力の低下や静電気による不具合が起こり得ます。

年間を通じて適正な湿度を維持することは、健康管理や作業効率の向上に欠かせません。こちらで紹介した湿度をコントロールする方法をもとに、快適な住空間を整えてみてはいかがでしょう。