
この記事では、個人売買の流れやメリット・デメリットについて、解説していきます。
不動産は個人で売買できる

不動産を売買する場合、一般的には不動産会社に仲介に入ってもらいます。しかし、仲介手数料が発生するため、「手数料を抑えるために自分で売却できないだろうか」と考える人もいるでしょう。
不動産売買は個人ですることが可能です。
不動産会社の場合は、宅建士の資格を持つ人が必要になりますが、個人間売買であれは資格がない個人で売買しても法的に問題なく取引と見なされます。
不動産売却で個人売買を選択する人はあまり多くありませんが、次のような場合に個人売買されるケースがあります。
- ・親しい親子や知人間での売買
- ・貸地を借主にそのまま売却する
- ・所有地を隣人に売却する
このように、買主が決まっている場合に選ばれる方法が、個人売買といえるでしょう。
また、仲介手数料がほとんどどれないような価値が低額な不動産は、不動産会社に取り扱ってもらえないケースが多く、そのような場合でも個人売買される傾向があります。
とはいえ、不動産の売買は手順が難しく、法律や税金などの専門的な知識も必要です。本来ならプロである不動産会社が進める手続きを個人で行うため、そう簡単にできるものではありません。また、十分な知識がないまま契約を進めてしまうと、トラブルに発展する可能性も高くなるのです。
そのため、基本的には個人売買はおすすめできません。トラブルなくスムーズに不動産を売却するなら、専門的な知識を持っている不動産会社に依頼するほうが賢明でしょう。
不動産を個人売買する流れ

ここでは、個人売買の流れを見ていきましょう。大まかな流れは次の通りです。
- 1.必要書類の準備
- 2.相場の確認・売却価格の設定
- 3.販売活動
- 4.価格交渉
- 5.取引内容に応じた契約書の作成・契約の締結
- 6.物件の引き渡し
必要書類の準備
事前準備として、必要書類を揃えておきます。必要になるタイミングは後になりますが、揃えるのに時間がかかる場合もあるので、早めに用意しておくとスムーズに取引を進められるようになるでしょう。
また、売却したい不動産の状態を正確に把握できる書類を先に用意して情報を把握しておくことで、売却もしやすくなります。
個人売買の場合、基本的に必要な書類は契約書のみです。しかし、契約書に記載するための必要な不動産情報を得るためなどに必要になる書類もあるので、次のような書類を用意しておくとよいでしょう。
- ・物件概要書
- ・登記事項証明書・登記簿謄本
- ・間取り図や測量図・境界線確定書
- ・検査済証
- ・固定資産税納税通知書
- ・本人確認書類や印鑑証明など
相場の確認・売却価格の設定
売却を進める前に、自分の不動産がいくらで売れるのか、相場を把握しておくことが大切です。特に、個人売買は不動産会社のアドバイスなしで価格を決めていくことになるため、相場を理解しておかないと、相場とかけ離れた価格をつけてしまう恐れがあります。
相場を把握する方法としては、次のような方法があります。
- ・公示価格を調べる
- ・近隣の取引価格を調べる
- ・査定に出す
近隣の似たような不動産条件の取引価格を把握することで、おおよその相場をつかめるでしょう。取引価格は、国土交通省の「土地総合情報システム」で検索可能です。
また、不動産会社のサイトで売却額を調べるもの良いでしょう。不動産の価格は個々の状況によって大きく異なるので、正確な価格が知りたいなら査定に出すのもおすすめです。
相場を調査したら、相場を元に自分の不動産の売却額を決めていきます。このとき、相場よりも極端に高値をつけてしまうと、なかなか売れないだけでなく、結局は値下げせざるを得なくなるので注意しましょう。
販売活動
個人売買の場合は、知人など買い手が決まっていることが多いですが、買い手が見つかっていない場合は買い手探しが必要です。
親戚や知人に購入希望者がいないか確認することや、近年はインターネット上に個人売買のマッチングサイトもあるので活用を検討してみるとよいでしょう。
購入希望者から問い合わせや内見希望が入ってきた場合は、売主が対応していきます。
価格交渉
不動産取引の価格は、最終的に売主と買主の合意で決まります。また、買主が価格交渉をしてくる可能性は高いので、値引きについてあらかじめ検討しておくことが大切です。
不動産の売却額でローン返済などを計画している場合、最低限確保したい利益がいくらなのかを事前に把握しておきましょう。いくら必要でいくらまで値引きできるのかを明確にしておくことで、過度な値下げに応じてしまうことを防げます。
取引内容に応じた契約書の作成・契約の締結
買主と条件に合意できれば、売買契約に進みます。売買契約書を作成し、契約を締結していきます。
不動産会社の仲介で売買契約する場合、契約前に重要事項説明がありますが、個人売買の場合は重要事項説明書の必要はありません。作成するのは売買契約書のみとなりますが、売買契約書は契約に関する書類なので、慎重に作成する必要があります。
個人売買の契約書はインターネットでテンプレートが提供されているので、テンプレートをベースに必要事項を書き加えていくと作成しやすいでしょう。
ただし、契約書に漏れやミスがあると後々トラブルに発展する可能性があるので、必要事項などは把握したうえで作成することが大切です。
物件の引き渡し
契約締結後は、物件の引き渡しと代金を受け取って個人売買は完了です。
しかし、不動産取引の場合、引き渡し後も不動産に欠陥が見つかったなどでトラブルが発生する事案が多くあります。欠陥が見つかった場合や契約内容と不動産の状態が異なる場合は、契約不適合責任が問われる恐れもあります。
売却前に不動産の状態を正確に把握して、すべて買主に告げ、契約書にも明記したうえで契約を進めるようにしましょう。
不動産を個人売買する際の注意点

個人売買する際の注意点としては、次の3つが挙げられます。
- ・価格設定が妥当かのチェックが必要
- ・トラブルのきっかけになる可能性のある部分は専門家に頼る
- ・親族への売買は贈与税に注意
それそれ詳しく見てきましょう
価格設定が妥当かのチェックが必要
売却する際の価格設定は、相場に対して妥当な価格であることが大切です。相場よりも極端に高ければ、なかなか買い手がつかなくなってしまいます。反対に、安値を付けてしまうと、売却できても手元にあまりお金が残らないでしょう。
一般的な仲介での売却であれば、不動産会社が価格の妥当性を判断し、必要ならアドバイスをしてくれます。しかし、個人売買の場合は、アドバイスなしで自分で決めなければならないので、妥当性が判断しにくくなるのです。
価格を決める際には相場を把握して、慎重に判断する必要があります。
自分の不動産の売却価格の目安を知りたいなら、無料の一括査定を利用するのも良いでしょう。複数の不動産会社の査定額を簡単に比較できるので、適切な価格を付ける参考になります。「SUUMOの無料一括査定」なら、全国の大手から地域の中小まで多くの不動産会社の査定額を簡単に入手できるので、活用してみるとよいでしょう。
トラブルのきっかけになる可能性のある部分は専門家に頼る
個人間売買の場合、契約書を自分で作成する必要があります。契約書に不備があると、後々法的なトラブルに発展する恐れがあるので、慎重に作成することが大切です。
また、登記手続きなどの法的な手続きも必要です。契約書や手続きなど法律が関わる部分については、司法書士などの専門家に頼むことをおすすめします。
知人間など親しい間柄の取引の場合、契約書が甘くても問題ないと考える人もいるでしょう。しかし、契約当時は問題なくても数年後や相続の際、関係が悪化したときなどにトラブルになるケースもあります。
どんなに親しい仲でも法的な部分となる契約は厳格に行う必要があるので、専門家に頼るほうが賢明でしょう。
親族への売買は贈与税に注意
親族間での売却は、価格によっては贈与税が発生する恐れがあります。相場よりも極端に低い価格で売却した場合、売却ではなく贈与と見なされ、相場との差額分が贈与税の対象となる可能性があるのです。
仮に、相場3,000万円の不動産を500万円で親族に売却した場合、差額の2,500万円は贈与と判断され、贈与税が課せられる恐れがあります。
親族間で、安値で売却を進める場合は、相場の把握とどの程度の差額までなら許容されるのかプロの判断を仰いだうえで、売却額を決めることをおすすめします。
個人売買で不動産を売却するメリット

個人売買するメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- ・仲介手数料などの費用負担を抑えられる
- ・売主の判断の自由度が高い
- ・買主のことをよく知っている場合にはメリットが大きい
仲介手数料などの費用負担を抑えられる
個人売買の大きなメリットは、仲介手数料がかからないため、売却にかかる費用を大きく抑えられるという点です。
仲介で売却した場合、契約成立時に不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料は、以下の計算で求められます。
仲介手数料上限(取引額400万円以上の場合)=取引額×3%+6万円+消費税
例えば、2,000万円の取引であれば、66万円(税抜)の仲介手数料が発生するのです。
高額な取引にもなれば、仲介手数料が100万円を超えることも珍しくありません。個人売買なら、この分の費用を抑えられるので、手元に残るお金を多くできるでしょう。
売主の判断の自由度が高い
個人売買の場合、販売価格や売却時期・条件や買手など、すべて自分で決めることができます。
仲介で売却する場合、不動産会社が売却を進めるうえではある程度妥協が必要になってくるので、すべて自分の希望通りに売却できない可能性が高くなります。
売主の自由度の高い個人売買であれば、自分の希望通りに売却できる可能性があるでしょう。ただし、すべてを自分の希望通りにするだけで一般的な条件を把握しておかなければ、買い手が現れない可能性もある点には注意が必要です。
買主のことをよく知っている場合にはメリットが大きい
個人売買や知り合い間での売買となるケースが多く、関係性が良好な相手との取引なら売却をスムーズに進めやすいというメリットがあります。親しい知り合いであれば、売主・買主の条件のすり合わせも話し合いで簡単に進められ、うまく一致できれば仲介よりも短期間で売却が可能です。
仲介の場合、不動産会社が間に入ってくれますが、買い手は全く知らない第三者であることが基本です。なかなか買い手との交渉が進まず、契約に時間がかかる場合や満足できる条件でない場合もあるでしょう。
個人売買で不動産を売却するデメリット

個人売買のデメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- ・トラブルに発展する可能性が高い
- ・買い手が見つかるまで時間がかかる
- ・手間と時間がかかる
トラブルに発展する可能性が高い
仲介であれば、知識を持った不動産会社が間に入るため、適切な説明や手続きを進めてくれます。しかし、個人売買の場合は、第三者を間に入れずに知識が少ない買主・売主の交渉だけで契約が進んでいくので、トラブルに発展しやすいのです。
下記のようなトラブルはよくあるので、個人売買は慎重に進める必要があります。
- ・契約内容の認識にズレがあった状態で契約を進めてしまう
- ・契約書に不備がある
- ・引き渡し後に物件の不具合が見つかった
買い手が見つかるまで時間がかかる
買い手がすでに決まった状態なら問題ありませんが、買い手を見つけるところからスタートする場合、買い手が見つかるまでに時間がかかるケースが多いでしょう。
仲介の場合は、不動産会社がチラシなどの広告やサイトへの掲載といった売却活動をしてくれます。しかし、個人の場合は個人で売却活動をしなければならないため、不動産会社のような広告は難しくなります。多くの人の目に留まる機会がほとんどないので、買い手は基本的に自分で話を持ちかけて見つけていくことになるでしょう。
また、個人売買の場合、買い手側が住宅ローンを組みにくい点も、契約が進まない要因になりかねません。住宅ローンの審査に必要な売買契約書を個人が作成するので、不備が発生しやすく、審査で認められない可能性があります。
売買契約後にトラブルに発展するケースも多いことから、金融機関は個人売買への融資に慎重な姿勢を取る傾向があるのです。
手間と時間がかかる
仲介なら売却活動や問い合わせ対応、契約書作成など、ほとんどの業務を不動産会社がサポートしてくれます。しかし、個人売買の場合は、それらのすべての業務を自分で行う必要があるのです。
各段階での知識が足りなければ、情報を調べるところから必要になり、契約書1枚作成するだけでもかなりの苦労が必要になります。また、これらの手間の多くは売主が負担することになるので、売主の負担は大きい点にも注意しましょう。
まとめ
個人売買の基本やメリット・デメリットについてお伝えしました。不動産を個人売買することで、仲介手数料を抑えられ、自分の希望通りの売却を叶えやすくなります。
しかし、法的な知識や複雑な手順が必要な不動産取引をプロのサポートなしに進めるため、手間や時間がかかるだけでなくトラブルに発展しやすくなるので注意が必要です。
トラブルなくスムーズな不動産売却を目指すなら、基本的には不動産会社に仲介してもらう方がよいでしょう。仲介・個人売買どちらであっても、まずは相場を把握することが大切です。相場を把握するなら、一括査定サイトを活用することをおすすめします。「SUUMOの無料一括査定」なら数多くの不動産会社の査定結果を簡単に入手できるので、相場の把握の役に立つでしょう。
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