マンションの固定資産税はいくらかかる?目安や計算方法をわかりやすく解説

この記事では、マンションの固定資産税の計算方法や適用できる軽減措置・具体的なシミュレーションを分かりやすく解説していきます。固定資産税について理解を深め、自身のマンションの固定資産税を計算できるようにしてきましょう。



マンションの固定資産税はいくらかかるか

マンションの固定資産税はいくらかかる?目安や計算方法をわかりやすく解説

固定資産税とは、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課せられる税金です。戸建てマイホームを所有している人にはなじみのある税金かもしれませんが、対象の不動産は戸建てだけではありません。

固定資産税はマンションに対しても課せられるので、マンションを所有している場合でも固定資産税を把握しておくことが大切です。

マンションの固定資産税の目安は、次の通りです。

  • ・新築マンション:10~30万円
  • ・中古マンション:10~20万円
 

ただし、実際に課せられる税金は地域や物件によって大きく異なります。また、軽減措置を適用できれば大幅に減額することも可能です。マンションの購入を検討している段階であれば、事前にどれくらいの固定資産税が掛かるのか不動産会社に確認することや自身でシミュレーションしてみるとよいでしょう。

なお、固定資産税は所有者に対して課せられるものです。マンションを購入した場合は所有者となるため固定資産税がかかりますが、賃貸の場合は所有者はあくまで大家さんであるため固定資産税は掛かりません。

固定資産税の基本的な計算方法

マンションの固定資産税はいくらかかる?目安や計算方法をわかりやすく解説

固定資産税とは、マンションや戸建てだけでなく、土地や山林などおおよそほとんどの不動産に課せられます。マンションの場合は、建物だけでなく所有する土地に対しても課せられるので、それぞれ分けて計算する必要があるのです。

固定資産税は、次の方法で算出できます。

固定資産税額 = 固定資産税評価額(土地・建物) × 税率

 

固定資産税評価額とは、固定資産税の計算の元となる不動産の価値を示した価格です。各自治体が個別に定めており、公示価格や建築価格の7割ほどが目安となります。ただし、3年に1度評価替えされ、さらに建物の場合は築年数が経過するごとに減少するという特徴もあるのです。

税金の計算というと複雑なイメージですが、固定資産税の計算は固定資産税評価額さえ分かれば比較的簡単にできます。自分で計算する際の大まかな手順は、次の通りです。

  • 1.土地・建物の固定資産税評価額を確認する
  • 2.建物の固定資産税額に経年減点補正率を掛ける
  • 3.土地・建物の固定資産税評価額に税率を掛ける
  • 4.土地・建物の固定資産税額を合算する
 

なお、上記の手順は基本的な税金の計算方法となり、実際には軽減措置を適用できるケースが多くあります。軽減措置については後述するので、まずは基本の手順を以下で確認していきましょう。

➀土地・建物の固定資産税評価額を確認する

固定資産税評価額とは、固定資産税の計算の基準となる価格です。これからマンションを所有する場合でマンションが中古や相続の場合は、次のような方法で調べられます。

  • ・固定資産税課税明細書を確認する:毎年送付される納税通知書に添付されている
  • ・固定資産税課税台帳の閲覧:自治体の役所の担当課で閲覧できる
  • ・固定資産評価証明書の取得:自治体の役所の担当課で入手できる
 

新築マンションの場合は金額が確定していませんが、おおよその金額は不動産会社に確認することができます。また、公示価格や建築価格から自分で目安額を計算することも可能です。

公示価格とは、国土交通省が公表する土地取引の目安となる価格のことをいい、固定資産税評価額は公示価格の70%程が目安とされています。建物については、同じ建物を再建築した場合の価格である「再建築価格」の70%程が目安です。

例えば、次の条件で計算していきましょう。

  • ・取引価格3,000万円の中古マンション
  • ・土地の地価公示価格:2,000万円
  • ・建物の再建築価格:1,000万円
 

上記の例の固定資産税評価額は次のようになります。

土地の固定資産税評価額 = 2,000万円×70%=1,400万円
建物の固定資産税評価額 = 1,000万円×70%=700万円

 

それぞれの価格に目安となる70%を乗じて、固定資産税評価額の目安を算出しています。

②建物の固定資産税評価額に経年減点補正率を掛ける

建物の場合、固定資産税評価額を一定なのではなく、経年劣化によって資産価値が減少した分を加味されます。減少分は築年数に応じて定められた「経年減点補正率」を乗じることで算出するのです。

経年減点補正率は法務局によって次のように定められています。

【非木造建築物減価補正率】
経過年数 経年減点補正率
1年 0.9579
2年 0.9309
3年 0.9038
4年 0.8803
5年 0.8569
10年 0.7397
20年 0.5054
30年 0.3059
40年 0.2089
45年以上 0.2000

参照:法務局「経年減価補正率表」

仮に、①のマンションが築10年の場合の固定資産税評価額は、次の通りです。

建物の固定資産税評価額=700万円×0.7397=517万7,900円

 

築10年の経年減点補正率0.7397を乗じて算出しています。

③土地・建物の固定資産税評価額に税率を掛ける

土地と建物の固定資産税評価額が分かれば、税率を乗じることで固定資産税が分かります。固定資産税の税率は自治体によって異なりますが、ほとんどの自治体で国が標準と定めている1.4%で課税しています。

ここでは、①②を元に税率1.4%で固定資産税を算出していきましょう。

土地の固定資産税額 = 1,400万円×1.4%=19万6,000円
建物の固定資産税額 = 517万7,900円×1.4%=7万2,400円(100円未満切り捨て)

 

それぞれの固定資産税評価額に税率を乗じて、固定資産税が算出できます。

④土地・建物の固定資産税額を合算する

固定資産税は土地と建物の固定資産税を合算した額の納税することになります。③で求めた固定資産税を合算します。

固定資産税=19万6,000円+7万2,400円=26万8,400円

 

よって、この例の場合は年間約26.8万円の固定資産税を納める必要があるのです。

ただし、固定資産税にはさまざまな軽減措置があり、適用基準を満たすことで税額を大きく抑えることもできます。以下では、マンションの固定資産税で適用できる軽減措置を見ていきましょう。

マンションの固定資産税の軽減措置

マンションの固定資産税はいくらかかる?目安や計算方法をわかりやすく解説

マンションの固定資産税では、土地と建物それぞれに適用できる軽減措置の特例があります。ただし、適用できる条件や期間が定められているので適用できるかは確認することが大切です。また、適用するには事前に申請が必要です。

軽減措置の申請は、自治体の役所に「住宅用地等申請書」を作成して申請します。申請期限も建築翌年の1月31日までと期限があり、期限を超えると軽減措置が適用できません。期限内に忘れずに申請できるよう準備を早めに行うことが大切です。

なお、自治体によって申請方法や申請の有無が異なる場合もあるので、お住まいの自治体に事前に確認してみましょう。以下では、土地と建物それぞれの代表的な軽減措置を解説していきます。

土地への軽減措置

居住用の建物が建設されている土地では、住宅用地の軽減措置を適用できます。この特例での軽減率は以下の通りです。

区分 軽減措置
200㎡までの部分の住宅用地(小規模住宅用地) 価格の1/6
200㎡を超える部分の住宅用地(一般住宅用地) 価格の1/3

参照:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」

この特例では、宅地200㎡までの部分の固定資産税評価額が6分の1,それを超える部分は3分の1に減額されます。宅地面積が200㎡を超える場合、200㎡以下とそれを超える部分に分けて計算します。

仮に、宅地面積300㎡で固定資産税評価額が1,200万円の場合は、次の通りです。

  • ・200㎡までの部分:1,200万円×(200÷300)×1/6=133万3,300円(100円未満切り捨て)
  • ・200㎡を超える部分:1,200万円×(100÷300)×1/3=133万3,300円(100円未満切り捨て)
 

よって、この場合の土地の固定資産税評価額は266万6,600円にまで減額できるのです。

マンションの場合は、戸数×200㎡以下の部分が小規模住宅用地となります。

建物への軽減措置

建物に対しては、新築住宅の軽減措置の適用が可能です。この特例での軽減措置は次の取です。

区分 一般的な住宅 認定長期優良住宅
適用範囲 1戸あたり12㎡までの部分 1戸あたり12㎡までの部分
軽減措置 1/2 1/2
適用期間 3年
※3階建以上の耐火・準耐火建築物の場合は5年
5年
※3階建以上の耐火・準耐火建築物の場合は7年
 

この特例では新築住宅の場合、1戸あたり床面積120㎡までの分の固定資産税評価額を3年間2分の1にできます。また、マンションの場合は軽減期間が5年になるのです。

さらに、建物が長期優良住宅に認定されていれば、その期間は戸建てで5年間、マンションで7年間に延長されます。

タワーマンションの固定資産税の取り扱い

マンションの固定資産税はいくらかかる?目安や計算方法をわかりやすく解説

タワーマンションは上層階と低層階で価格に大きな差が生まれるものです。そのことを考慮して平成29年の税制改正により、タワーマンションの場合は固定資産税が階数に応じて補正がかかるようになりました。なお、この法律ではタワーマンションの定義と高さ60mを超え複数の回に住戸が所在しているものとしています。

タワーマンションに該当する建物の場合、1階を100として、階数が1つ増えるごとに10/39を加算した補正率を乗じて固定資産税表が額を算出するのです。例えば、40階の場合は、補正率が100+(10/39)×39=110が補正率となります。

マンションの固定資産税の計算シミュレーション

マンションの固定資産税はいくらかかる?目安や計算方法をわかりやすく解説

固定資産税は、新築か中古か、また土地と建物の内訳などによっても大きく異なります。

ここでは、いくつかのパターンでマンションの固定資産税をシミュレーションしてみましょう。なお、ここでは固定資産税の税率を1.4%で計算していきます。

2,000万円の中古マンションの場合

まずは、次の条件で固定資産税を算出します。

取引価格:2,000万円
築年数:40年
専有面積:100㎡
土地の評価額:1,200万円
建物の評価額:800万円

 

築40年なので、土地の軽減措置は適用できますが、新築物件の軽減措置は適用できません。ただし、建物は築40年の経年減点補正率0.2089が適用されるので、固定資産税は次のようになります。

土地の固定資産税:1,200万円×1/6×1.4%=2万8,000円
建物の固定資産税:800万円×0.2089×1.4%=2万3,300円(100円未満切り捨て)
固定資産税合計:2万8,000円+2万3,300円=5万1,300円

 

よって、上記の条件では5万1,300円の固定資産税が必要になります。

3,000万円の中古マンションの場合

次は以下の条件で計算していきましょう。

取引価格:3,000万円
築年数:30年
専有面積:200㎡
土地の評価額:2,000万円
建物の評価額:1,000万円

 

築30年なので、土地の軽減措置は適用できますが、新築物件の軽減措置は適用できません。ただし、建物は築40年の経年減点補正率0.3059が適用されるので、固定資産税は次のようになります。

土地の固定資産税:2,000万円×1/6×1.4%=4万6,600円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税1,000万円×0.3059×1.4%=4万2,800円(100円未満切り捨て)
固定資産税合計:4万6,600円+4万2,800円=8万9,400円

 

4,000万円の新築マンションの場合

新築マンションの固定資産税をシミュレーションしてみましょう。
条件は以下の通りです。

取引価格:4,000万円
専有面積:100㎡
土地の評価額:2,800万円
建物の評価額:1,200万円

 

土地・建物それぞれで軽減措置を適用でき、固定資産税は次のようになります。

土地の固定資産税:2,800万円×1/6×1.4%=6万5,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税1,200万円×1/2×1.4%=8万4,000円
固定資産税合計:6万5,300円+8万4,000円=14万9,300円

 

5,000万円の新築マンションの場合

最後に、「新築マンションの条件を変えて固定資産税をシミュレーションしてみましょう。条件は次の通りです。

取引価格:5,000万円
専有面積:200㎡
土地の評価額:3,000万円
建物の評価額:2,000万円

 

土地・建物それぞれで軽減措置を適用でき、固定資産税は次のようになります。

土地の固定資産税:3,000万円×1/6×1.4%=7万円
建物の固定資産税:2,000万円×1/2×1.4%=14万円
固定資産税合計:7万円+14万円=21万円

 

新築マンションの場合、軽減措置を適用でき固定資産税を大きく抑えられます。しかし、適用期間が終了する6年目から建物の固定資産税が元の高い税額に戻る点に注意しましょう。

まとめ

本記事では、マンションの固定資産税の計算方法や具体的なシミュレーションをお伝えしました。固定資産税は、土地と建物の割合や築年数などによって大きく異なってきます。軽減措置を適用することで税額を抑えることもできますが、適用期間終了後に税金の負担が大きくなる点には注意しましょう。

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