短期譲渡所得とは?計算方法や長期譲渡所得との違いを解説

この記事では、短期譲渡所得とは何か、短期譲渡所得にかかる税率、短期譲渡所得の計算方法、シミュレーション、利用できる特別控除などについて解説します。短期譲渡所得について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。



短期譲渡所得とは

短期譲渡所得とは?計算方法や長期譲渡所得との違いを解説

譲渡所得とは、資産を譲渡したことによって生じた利益(所得)のことです。譲渡所得が発生した場合、事業所得や給与所得などの所得と分離して税額を計算する分離課税が適用されます。

短期譲渡所得とは、売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下の譲渡所得です。2020年4月1日に購入した土地や建物などの不動産を2023年9月1日に売却した事例で考えてみましょう。基準となるのは不動産を売却した2023年9月1日ではなく、売却した2023年1月1日です。2023年1月1日時点では所有期間が2年8ヵ月となるため、売却で得た利益は短期譲渡所得に該当します。

分離課税について詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
関連記事:譲渡所得とは?不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法をケース別に解説

短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い

長期譲渡所得は、売却した年の1月1日時点において所有期間が5年超の譲渡所得です。2010年4月1日に購入した土地や建物などの不動産を2023年9月1日に売却した事例で考えてみましょう。基準となるのは不動産を売却した2023年9月1日ではなく、売却した2023年1月1日です。2023年1月1日時点では所有期間が12年8ヵ月となるため、売却で得た利益は長期譲渡所得に該当します。

短期譲渡所得と長期譲渡所得は、資産の所有期間が5年以下か、5年超かという点で異なります。所有期間による違いだけでなく、適用される税率も異なるため、事前に両者の違いをしっかり把握しておくことが大切です。

所有期間を決めるのが、売却した年の1月1日時点であるというのが大きなポイントです。仮に2018年4月1日に購入した不動産を2023年9月1日地に売却した場合、暦上は5年5ヵ月ですが、2023年1月1日時点では4年8ヵ月なので長期譲渡所得の要件を満たしておらず、短期譲渡所得に分類されるので注意しましょう。

長期譲渡所得について詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
関連記事:長期譲渡所得とは?税率の計算方法や特別控除について解説!

短期譲渡所得にかかる税率

短期譲渡所得とは?計算方法や長期譲渡所得との違いを解説

譲渡所得には所得税や住民税、復興特別所得税などが課されます。適用される税率は譲渡所得が短期譲渡所得、長期譲渡所得なのかによって異なります。短期譲渡所得の場合に適用される税率は、以下の通りです。

所得税 住民税 復興特別所得税 合計
短期譲渡所得 30% 9% 0.63% 39.63%

※2013年から2037年までは所得税に2.1%を乗じた復興特別所得税が上乗せされます

一方、長期譲渡所得の場合に適用される税率は以下の通りです。

所得税 住民税 復興特別所得税 合計
長期譲渡所得 20% 5% 0.315% 20.315%

※2013年から2037年までは所得税に2.1%を乗じた復興特別所得税が上乗せされます

上記のように短期譲渡所得と長期譲渡所得で適用される税率は約2倍異なります。そのため、もし土地や建物などの不動産の売却で譲渡所得が発生する場合は、売却時期を調整できるのであれば長期譲渡所得の条件を満たしてから売却したほうが税負担を抑えられるでしょう。

短期譲渡所得の計算方法

短期譲渡所得とは?計算方法や長期譲渡所得との違いを解説

不動産の売却によってどのくらいの税金が課されるのかを計算するには、まず短期譲渡所得(売却益)がいくらなのかを算出する必要があります。短期譲渡所得の計算方法は以下の通りです。

譲渡所得(売却益)=売却金額-(取得費+譲渡費用)-控除額

 

取得費と譲渡費用が何なのかについて詳しく見ていきましょう。

取得費

取得費とは、売却した土地や建物を購入した際の購入代金や購入時にかかった手数料、購入後に支出した改良費や設備費などです。具体的には、以下のような費用が取得費に含まれます。

  • ・購入代金や建築代金
  • ・仲介手数料
  • ・測量費用、整地費用、建物解体費用
  • ・改良費、設備費
  • ・一定の借入金利子
 

なお、建物の取得費からは所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。建物といった固定資産を使用する際、使用年数に応じて資産価値が減少します。資産価値の減少を一定のルールに基づき計算したのが減価償却費です。

取得費が分からない場合や実際の取得費が譲渡価格の5%よりも少ない場合、譲渡価格の5%を概算取得費として計上できます。

譲渡費用

譲渡費用とは、土地や建物を売却する際に支出した費用で、仲介手数料や測量費などが挙げられます。具体的には、以下のような費用が譲渡費用に含まれます。

  • ・仲介手数料
  • ・印紙税
  • ・借家人に支払った立退料
  • ・建物解体費
 

印紙税とは、売買契約書のような課税文書を作成する際に貼付して納める税金です。印紙税の金額は売買契約書に記載された契約金額によって異なります。

立退料とは、第三者に貸した建物を売却する際、借主に立ち退いてもらう場合に支払う費用です。

短期譲渡所得の計算シミュレーション

短期譲渡所得とは?計算方法や長期譲渡所得との違いを解説

所有期間5年以下の不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、具体的にどのくらいの税金が課されるかシミュレーションしてみましょう。以下は、2020年1月1日に4,000万円で取得した不動産を2023年9月1日に4,500万円で売却したケースです。

  • ・売却金額:4,500万円
  • ・取得費:4,000万円
  • ・譲渡費用:200万円
  • ・所有期間:3年8ヵ月
  • ・特別控除:なし
 

短期譲渡所得は以下の計算結果となります。

4,500万円-(4,000万円+200万円)-0円=300万円

 

短期譲渡所得に課される税金は以下の計算式を使用します。

税額=課税短期譲渡所得金額-39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)

 

今回のケースで課される税金は、以下の通りです。

所得税 住民税 復興特別所得税 合計
短期譲渡所得 60万円 18万円 1万2,600円 79万2,600円
 

短期譲渡所得における特別控除

短期譲渡所得とは?計算方法や長期譲渡所得との違いを解説

短期譲渡所得に適用される税率が高く、税負担を軽減できないのか気になっている方も多いでしょう。短期譲渡所得に利用できる特別控除として、以下の2つの控除が挙げられます。

  • ・土地や建物などの譲渡所得の特別控除
  • ・土地や建物以外の譲渡所得の特別控除
 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

土地や建物などの譲渡所得の特別控除

土地や建物などの譲渡所得の特別控除とは、土地や建物などの売却において、譲渡所得を計算する際に受けられる可能性がある以下のような控除です。

  • ・公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
  • ・マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
  • ・被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
  • ・特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
  • ・特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
  • ・平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
  • ・農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
  • ・低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例
 

利用できる可能性が高い3,000万円の特別控除の特例を詳しく説明していきます。

3,000万円の特別控除特例

3,000万円の特別控除の特例とは、マイホームを売却する際、譲渡所得から3,000万円を差し引くことができるという制度です。不動産の所有期間に関係ないため、所有期間が短い短期譲渡所得でも利用できます。

譲渡所得が3,000万円以下の場合には、課税対象となる譲渡所得がなくなるので課税されません。3,000万円の特別控除の特例を利用する際は、不動産の所有期間は関係ありませんが、以下の条件を満たす必要があります。

  • ・マイホームを売却またはマイホームとその土地を売却する
  • ・マイホームに住まなくなってから3年以内に売却する
  • ・取り壊した場合は、1年以内に売却かつその間に土地を活用して利益を得てはいけない
  • ・売却した年から3年前までにこの特例を利用していない
  • ・売り手と買い手が親族関係(親子や夫婦など)ではない

参照:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例

また、マイホームを買い換える際に利用できるマイホームの買い換えや交換の特例の適用を受けていないことも条件として挙げられるので注意してください。

土地や建物以外の譲渡所得の特別控除

土地や建物以外の譲渡所得については、最高50万円の特別控除を利用できる可能性があります。譲渡所得のうち、土地や建物および株式以外の資産を譲渡したときの譲渡所得は以下のように計算します。

短期譲渡所得-(取得費+譲渡費用)+長期譲渡所得-(取得費+譲渡費用)=譲渡益

 

譲渡益-特別控除額(50万円)=譲渡所得

 

特別控除額は最高50万円となっています。短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計に対して適用されますが、まず先に短期譲渡所得の譲渡益から控除、残りがある場合には長期譲渡所得の譲渡益から控除するという仕組みです。

まとめ

売却した年の1月1日時点で5年以下の不動産売却で利益(譲渡所得)が発生した場合、短期譲渡所得として扱われます。5年を超える場合は長期譲渡所得として扱われますが、両者は適用される税率が大きく異なるので注意が必要です。

短期譲渡所得に該当した場合に適用される税率は、所得税・住民税・復興特別所得税を合算した39.63%です。特別控除を利用することで税負担を軽減できるため、短期譲渡所得に該当する売却を予定している方は、それぞれの特別控除には利用条件が決まっているため、特別控除の種類や利用条件を事前に確認しておきましょう。

不動産の売買を考えている方には、ニフティ不動産の「SUUMOの無料一括査定」がおすすめです。大手から地元密着型まで幅広い不動産会社の査定がわかるので、あなたにぴったりの不動産会社と出会えるでしょう。

アプリなら新着物件を見逃さない!ニフティ不動産アプリ

部屋を借りる!賃貸版はこちら

住宅を買う!購入版はこちら