
この記事では、長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いや具体的な計算方法、活用できる特例についてわかりやすく解説します。
長期譲渡所得とは

長期譲渡所得とは、5年以上所有した不動産を売却した際の利益のことです。不動産を売却した場合の利益は「譲渡所得」に区分され、所得税・住民税の対象です。
譲渡所得は、所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に区分されます。
関連記事:譲渡所得とは?不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法をケース別に解説
短期譲渡所得との違い
短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いは、所有期間が「5年以下」か「5年超」かという点です。不動産を売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、5年超えなら長期譲渡所得に区分されます。
ただし、所有期間の算出基準日が1月1日という点には注意が必要です。
例えば、2015年6月1日に購入した不動産を、2020年6月2日に売却したとします。実際の所有期間は5年を経過していますが、所有期間算出の基準日である2020年1月1日時点では5年経過していないため、短期譲渡所得となるのです。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分
長期譲渡所得と短期譲渡所得では、課税される税率が異なります。それぞれの違いを一覧で確認しましょう。
区分 | 所有期間 | 税率 | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年を超えるもの | 20% ※20.315%
(所得税15%・住民税5%) |
|||||||||||||||
短期譲渡所得 | 5年以下のもの | 39% ※39.63%
(所得税30%・住民税9%) |
※2013年から2037年までは復興特別所得税として別途2.1%が上乗せされた税率
上記のように、短期と長期では2倍近い税率の差が発生します。
仮に、1,000万円の譲渡所得がある場合、それぞれの税額は次の通りです。
- ・長期譲渡所得:約203万円
- ・短期譲渡所得:約396万円
短期で課税されると、1,000万円の利益が出ても、手元に残るのは600万円程になってしまいます。
高額な取引になる不動産売却は、かかる税金も高額になります。場合によっては、支払いに対応できない可能性も出てくるでしょう。税金について理解しておくことで、税額を抑えて手元に少しでも多くのお金を残せるようになります。
長期譲渡所得に発生する税金の計算方法

ここでは、長期譲渡所得にかかる税金の計算方法を確認していきましょう。税金の計算方法というと複雑なイメージを持っている人も多いですが、基本を押さえることで、おおよその税額を計算することは可能です。
いくらの税金を納めるかを事前に確認しておくことで、売却後の納税に慌てることがないため、計算方法は理解しておいて損はありません。
長期時譲渡所得の計算方法は、次の2つのステップです。
- ・課税長期譲渡所得額を計算する
- ・課税長期譲渡所得額に所得税・住民税の税率を掛ける
それぞれ詳しく見てきましょう。
1.課税長期譲渡所得額を計算する
課税対象となる譲渡所得は、次の計算方法で求めます。
課税長期譲渡所得額=譲渡価額(売却価格)-(所得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡価額とは、不動産の売却額のことです。ここから、取得にかかった費用と売却にかかった費用を差し引いた額が譲渡所得額となります。
取得費とは、売却した不動産を購入したときの費用です。購入価格だけでなく、不動産の仲介手数料や印紙税、設備費、改良費なども含まれます。ただし、取得費は減価償却費を差し引く必要がある点に注意が必要です。建物は、経年劣化により資産価値が減少するため、減少した価値は売主が享受したものとみなされ、売却時の取得費から差し引かなければなりません。
なお、土地は経年で資産価値が減少することはないため、減価償却しない資産となり、取得価格がそのまま取得費になります。
また、取得時の価格がわからない場合は、売却額の5%を概算取得費として計上しましょう。概算取得費になると、差し引ける価格が少なくなり利益が発生しやすくなるので、購入時の領収書などはしっかりと保管しておくことが大切です。
譲渡費用とは、売却にかかった費用のことをいいます。仲介手数料や測量費、印紙税、立ち退き費用などが譲渡費用として計上できます。
例えば、次のケースで譲渡所得を計算していきましょう。
- ・売却額:4,000万円
- ・購入費用:3,000万円(土地1,000万円/建物2,000万円)
- ・取得時の手数料等:200万円
- ・減価償却費:1,000万円
- ・売却費用:300万円
減価償却費を差し引いた購入費用+取得費は次のようになります。
取得費=1,000万円+(2,000万円-1,000万円)+200万円=2,200万円
よって、譲渡所得額は次の通りです。
譲渡所得=4,000万円-(2,200万円+300万円)=1,500万円
2.課税長期譲渡所得額に所得税・住民税の税率をかける
譲渡所得税は、算出した課税長期譲渡所得に譲渡所得税の税率をかけることで算出できます。
税率は、前述の表より、所得税・特別復興税15.315%、住民税5%の合計20.315%です。
上の例の長期譲渡所得で税額を算出すると、次のようになります。
長期譲渡所得の税額=1,500万円×20.315%=304万7,250円
この場合、約305万円が長期譲渡所得税となるのです。
長期譲渡所得に発生する税金に対して利用できる特別控除

譲渡所得に課せられる税金は、特例を適用することで節税することが可能です。
課税長期譲渡所得額=譲渡価額(売却価格)-(所得費+譲渡費用)-特別控除
上記計算式の「特別控除」の部分で一定額を控除できるので、課税対象の所得額を抑えられ、かかる税金も抑えられます。
ここでは、代表的な特例として次の3つを紹介します。
- ・居住用財産の3,000万円特別控除
- ・相続した空き家の3,000万円特別控除
- ・軽減税率の特例
居住用財産の3,000万円特別控除
居住用財産の3,000万円特別控除とは、マイホームを売却した場合、最大3,000万円を控除できる制度のことです。
仮に、課税譲渡所得が4,000万円になった場合、この特例を利用することで3,000万円を控除でき、1,000万円が課税対象となるのです。譲渡所得額が3,000万円以下であれば、この特例で譲渡所得が0円となるため、税金が発生しなくなります。
ただし、この特例では、売却する家がマイホームであることなど適用要件がある点に注意が必要です。主な要件としては、次のようなことがあります。
- ・自分の住んでいる家や家と敷地の売却であること
- ・住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までの売却であること
- ・売った年の前年・前々年にこの特例や他の特例を適用していないこと
- ・買主と売主の関係が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
3,000万円特別控除と併用できない特例もあるので、どの特例を適用したほうがお得になるかは、事前にシミュレーションして検討することが大切です。
なお、この控除の詳細については、国税庁のサイトで確認してみてください。
参考:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
相続した空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却する場合、最大3,000万円の控除が可能です。この特例の要件には、次のような条件があります。
- ・相続開始の直前まで被相続人が居住していた家屋とその敷地であること
- ・相続により取得した空き家であること
- ・相続から売却までの期間空き家であること
- ・相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること
- ・売却価格が1億円以下であること
- ・買主と売主の関係が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
この特例は、空き家を解体して更地で売却する場合でも適用できます。ただし、解体してから売却までの期限が決まっているので、解体は慎重に判断することが大切です。
以下の国税庁のサイトでも詳細を確認しておきましょう。
参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、所有期間が10年を超える不動産を売却した場合に、譲渡所得税の税率を引き下げる制度のことです。この特例を適用することで、譲渡額6,000万円以下の部分は税率を14.21%に引き下げることが可能です。通常の長期譲渡所得税の税率が20.315%なので、大きな節税効果が見込めます。この特例を適用するための要件には次のようなことがあります。
- ・自分の住んでいる家や家と敷地の売却であること
- ・所有期間が10年を超えていること
- ・住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までの売却であること
- ・売った年の前年・前々年にこの特例や他の特例を適用していないこと
- ・買主と売主の関係が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
この特例は、先述した3,000万円特別控除との併用が可能です。両方を適用することで、より大きな節税が見込めるので、適用できそうな場合は条件を確認してみるとよいでしょう。
参考:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
不動産売却を検討するなら、まずは一括査定!

不動産は、売却するタイミングによって利益にかかる税率が異なります。少しでもお金を手元に残すなら、5年を超えてからの売却と特例の活用を検討することが大切です。そのうえで、より高値で売却することで手元の多くのお金を残せるようになるでしょう。
高値で売却するためには、できるだけ多くの不動産会社に査定を受けることをおすすめします。数多くの査定結果を比較することで、相場観をつかめ、安値での売却を防ぎやすくなるというメリットもあります。
複数の不動産会社に査定依頼するなら、一括査定がおすすめです。一括査定なら、簡単な入力だけで複数の不動産会社の査定結果を入手できるので、査定にかかる手間や時間を省けます。
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まとめ
長期譲渡所得の計算方法や適用できる特例についてお伝えしました。不動産を売却した際にかかる譲渡所得税は、所有期間5年を境に長期と短期に分かれ、税率も異なります。短期譲渡所得に区分されると、高い税率で課税されるので、注意しましょう。
また、特例を適用することで節税もできるので、特例の活用を検討することも大切です。
少しでも手元に多くお金を残すには、節税も大事ですが、高値での売却も重要になります。「SUUMOの無料一括査定」を利用して、少しでも高値で売却できる不動産会社を選ぶことで、満足できる売却を目指せるでしょう。
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