
しかし、マイホームを売却する場合、3,000万円を控除できる制度があり、適用することで税負担を大きく軽減できます。ただし、適用要件や併用できる特例などさまざまな決まりもあるので、どのような制度なのかを理解しておくことが大切です。
この記事では、「3,000万円特別控除」の適用要件や申告方法などを分かりやすく解説します。
- 3,000万円特別控除とは
- 3,000万円特別控除を受けるための適用要件
- 3,000万円の特別控除の申告方法と提出書類
- 3,000万円特別控除以外の控除制度との併用について
- 3,000万円特別控除に関するよくある質問
- まとめ
3,000万円特別控除とは

3,000万円特別控除とは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度のことです。正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれ、マイホームを売却した際に活用することで、税金を大きく減らせます。
そもそも不動産を売却した場合、売却による利益は譲渡所得と呼ばれ譲渡所得税の対象です。譲渡所得税は不動産の所有期間により税率が異なり、短期譲渡所得では39.63%と高い税率がかかってくるため、納税額も百万円を超えることも珍しくありません。
譲渡所得税の計算方法は、次のようになります。
譲渡所得税=(物件の売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除)×税率(20~39%)
このように、高い税金が課せられる可能性のある譲渡所得ですが、税金を抑えるための控除も多く用意されています。上記の計算式のように、「特別控除」は売却価格から差し引けるので、課税対象となる譲渡所得を大きく抑えられ、税負担の軽減が期待できるのです。
その中でも、代表的な特別控除が「3,000万円特別控除」です。ただし、3,000万円特別控除はすべての不動産売却で利用できるわけではないため、適用要件を把握しておく必要があります。
譲渡所得税の計算については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事:譲渡所得とは?不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法をケース別に解説
参照:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
3,000万円特別控除を受けるための適用要件

3,000万円特別控除の主な適用要件として、次のような条件があります。
- ・自分が住んでいる家屋か、家屋とともに敷地や借地権の売却であること
- ・住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること
- ・売った年の前年・前々年にこの特例、およびほかの特例を適用していないこと
- ・売り手と買い手が親子や夫婦といった特別な関係でないこと
3,000万円特別控除を適用するには、自分が居住している物件(マイホーム)の物件であることが重要になります。マイホームであれば戸建てだけでなくマンションなどでも適用可能です。ただし、マイホームとして認められるためには、「居住用として使用しているか」が重要なポイントとなります。
マイホームを所有していても、転勤や親の介護のための同居などで生活拠点が異なる場合は、マイホームと認められない可能性があるので注意しましょう。また、すでに引っ越ししている場合、前のマイホームの売却で特例を適用できる期限が3年という点も気を付けなければなりません。
適用除外となるケース
マイホームであっても、次のようなケースの場合は特例が適用できません。
- ・3,000万円特別控除の適用だけを目的に入居していた場合
- ・居住用家屋の建設期間中の仮住まいとして使った家屋など、一時的な目的で入居していた場合
- ・別荘など主に趣味・娯楽・保養のための家屋
詳しい適用要件は、国税庁のホームページで確認できるので、該当するかを一度確認してみるとよいでしょう。
3,000万円の特別控除の申告方法と提出書類

3,000万円特別控除は、要件を満たせば自動的に適用されるものではありません。適用するためには自分で申告しなればならないので注意しましょう。
ここでは、申告方法と提出書類を解説していきます。
申告方法
3,000万円特別控除を適用する場合、売却した翌年に確定申告する必要があります。確定申告期間は、2月16日から3月15日となり、この期間に所轄の税務署に必要書類を提出して申告します。
不動産を売却して利益が出た場合は、確定申告で譲渡所得税の申告・納税が必要です。しかし、利益が出ない場合、確定申告は不要となります。
ただし、3,000万円特別控除を適用して利益がゼロとなる場合、税金はかかりませんが申告は必要なので、早めに準備を進めておきましょう。
提出書類
申告に必要な書類には、次のようなものがあります。
- ・確定申告書
- ・譲渡所得の内訳書
- ・売却前日時点でマイホームの住所と住民票の住所が異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
- ・購入時と売却時の売買契約書のコピーと費用の領収書
確定申告書の作成や必要書類の準備などに不安がある人は、税理士に相談することをおすすめします。また、確定申告時期には自治体で相談窓口も設置されるので、こちらを活用するのも良いでしょう。
申告書や書類に不備があれば申告後の訂正に時間がかかってしまうため、慎重かつ早めに準備を進めておくことが大切です。
3,000万円特別控除以外の控除制度との併用について

譲渡所得で適用できる控除は、ほかにもさまざまな特例があります。
しかし、特例によって3,000万円特別控除と併用できるものと併用できないものもあるので注意が必要です。利用できる特例が複数あり、併用できない場合は、どちらか有利になるか計算して適用する特例を決めるようにしましょう。
【併用可】10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、所有期間が10年を超えるマイホームの売却の場合、譲渡所得税の税率を軽減できる特例です。
所有期間が5年超える長期譲渡所得の場合、適用税率は20.315%ですが、この特例を適用することで譲渡所得が6,000万円以下の部分では14.21%まで引き下げられます。
この特例は3,000万円特別控除と併用できるので、長期所有したマイホームを売却する場合は大きな節税効果が期待できるでしょう。
参照:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
【併用不可】住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、ローン残高に応じて一定額を所得税から控除できる制度です。
借入期間10年以上の住宅ローンであれば、年末時点の残高×0.7%を最大13年間控除できます。住宅ローン控除は所得税から直接控除できる税額控除のため、節税効果が高く、住宅ローンを組む際に検討している方も多いでしょう。
しかし、住宅ローン控除は3,000万円特別控除との併用ができません。マイホームを売却して新しいマイホームを住宅ローンで購入した場合、どちらかしか適用できないのでしっかりシミュレーションして有利な方を選択する必要があるのです。
参照:国税庁|No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
【併用不可】マイホームの買い換え特例
マイホームの買い換え特例とは「特定居住用財産の買換え特例」のことをいい、マイホームを売却し新しいマイホームに買い替えた場合に、譲渡所得税を将来に繰り延べできる制度です。
この特例では、要件を満たすことでマイホーム売却での譲渡所得が発生しても、買い替えたマイホームを将来売却するときまで譲渡所得税を繰り延べできます。
例えば、売却で2,000万円の譲渡所得がある場合、特例を適用することで売却した年での課税はありません。しかし、買い替えたマイホームを売却した際に、1,000万円の譲渡所得が発生すると、繰り延べた2,000万円を加えた3,000万円が課税対象となるのです。
この特例を利用する場合、3,000万円特別控除は適用できません。将来買い替えたマイホームを売却する予定がないなどでは買い替え特例が有利になる場合もありますが、売却した場合に大きな税負担がかかってしまう可能性もある点には注意が必要です。
この特例は、税金が免除されずに先送りにされるだけという点には注意して、どちらを適用したほうがよいか検討するようにしましょう。
参照:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
【併用不可】譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは、ローン残高を下回る売却で損失が出た場合、損失分を給与所得と損益通算できる特例です。
その年だけでは控除しきれない分は、翌年以降最長3年控除でき、所得税の節税が期待できます。この特例も3,000万円特別控除とは併用できません。
参照:国税庁|No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
3,000万円特別控除に関するよくある質問

最後に、3,000万円特別控除に関するよくある質問を見ていきましょう。
売却益が3,000万円未満の場合も確定申告は必要?
売却益が3,000万円未満で3,000万円特別控除を適用すると、売却益がゼロとなり税金は発生しません。
しかし、特例を適用して売却益がゼロになる場合でも、特例を適用するために確定申告は必要です。特例が自動的に適用されて非課税となるわけではないので、注意しましょう。
マイホームを取り壊して土地を売却したときでも3,000万円特別控除を利用できる?
マイホームを取り壊して土地を売却した場合でも、一定の要件を満たすことで適用可能です。ただし、取り壊し後1年以内に売却など、細かい要件が定められているので、いつ更地にするかは慎重に判断する必要があります。
購入希望者の中には古い物件でも購入したいという人もいるので、更地にして売却するかは不動産会社と相談して決めることをおすすめします。
土地や建物を誰かと共有している場合でも利用できる?
共有名義のマイホームであっても適用可能です。この場合、共有名義者一人につき3,000万円まで控除できます。
ただし、それぞれで確定申告する必要があるので注意しましょう。
建物の一部を賃貸として貸し出している場合でも利用できる?
賃貸併用住宅の場合、居住用部分についてのみ3,000万円特別控除を適用できます。例えば、3,000万円で売却し、そのうち1,000万円が住宅部分であれば、1,000万円に対して適用できるのです。
ただし、すべてを賃貸住宅として売り出す場合は控除が適用できません。反対に、売却時点で賃貸をやめており、すべてマイホームとして売り出した場合は、3,000万円が控除の対象となるのです。
賃貸併用住宅の場合は、売り出し方などによっても適用が異なってくるので専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
譲渡所得から3,000万円を控除できる「3,000万円特別控除」の要件や他の特例との併用についてお伝えしました。
マイホームの売却の場合譲渡所得から3,000万円を控除することで、譲渡所得税を大幅に軽減できます。ただし、10年超所有軽減税率の特例以外の特例や住宅ローン控除とは併用できないため、どの特例を適用するかはシミュレーションして慎重に判断することが大切です。
マイホームの売却では特例を適用することで税負担を軽減できるためより多くのお金を手元に残しやすくなります。さらに、少しでも高値で売却できる不動産会社を選べば、まとまった資金を得やすくなるものです。
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