譲渡とは|贈与・売却・相続との違いや有償譲渡の流れを解説!

不動産の取得方法によって、かかる税金や費用が異なってくるため、これらの違いを理解しておくことが大切です。この記事では、不動産の譲渡について、ほかとの違いやかかる税金を分かりやすく解説していきます。



譲渡とは

譲渡とは|贈与・売却・相続との違いや有償譲渡の流れを解説!

譲渡とは、「権利を譲り渡すこと」のことを指します。有償・無償を問わずに権利を譲り渡すことが譲渡となるので、売買だけでなく交換や贈与・公売なども譲渡に含まれるのです。

しかし、不動産取引においては、譲渡というと一般的に「有償」の取引のことをいいます。

贈与との違い

贈与とは、生前に無償で権利を譲り渡すことをいいます。法律や税制上は、「贈与=無償譲渡」というように譲渡の一つにあたるのですが、不動産取引では有償か無償かで区別しているので注意しましょう。

与える側を贈与者、受ける側を受贈者と呼び、法的に贈与を成立させるためには贈与者と受贈者の合意が必要です。合意のうえで、「無償で誰かに不動産をあげる」と贈与となるのです。贈与の場合は、受贈者に対して贈与税が課せられます。

相続との違い

相続とは、個人が亡くなった後に遺族などが財産を引き継ぐことをいいます。無償で誰かに権利を譲るという点では贈与と同じです。

贈与と相続の大きな違いは、「いつ」財産を譲り渡すのかという点にあります。贈与が生前にできるのに対し、相続は亡くなった後にしかできないという点が異なるのです。

相続の場合、遺産を受け継ぐ人が相続人、譲り渡す側が被相続人と呼ばれ、相続人には相続税が課せられます。

売却との違い

譲渡は、一般的な意味合いでは有償・無償を問わないため、「有償の譲渡=売却」となります。

ただし、不動産取引での譲渡は有償の取引を指すのが一般的であり、大まかな意味では売却と同義と捉えてよいでしょう。

しかし、譲渡の場合は受け取る対価は金銭だけとは限らないため、「交換」も譲渡の一種となる点には注意が必要です。

不動産の有償譲渡(売却)でかかる費用と税金

譲渡とは|贈与・売却・相続との違いや有償譲渡の流れを解説!

不動産を有償譲渡した場合、さまざまな費用が発生するので、どのような項目がかかるのか理解しておくことが大切です。ここでは、不動産を有償で譲渡した場合にかかる費用と税金をそれぞれ分けて解説してきます。

不動産の有償譲渡でかかる費用

有償譲渡にかかる費用の項目と目安額は、次の通りです。

名称 概要 金額
仲介手数料 不動産会社に支払う仲介業務の報酬 上限額:売却価格×3%+6万+消費税
住宅ローン返済手数料 ローンの完済にかかる手数料 5,000円~3万円
司法書士費用 抵当権の抹消などで司法書士を依頼する場合にかかる費用 1万円~5万円
 

仲介手数料

不動産の売却で不動産会社に仲介を依頼した場合、売却成立時に不動産会社への仲介手数料が発生します。仲介手数料は上限が法律で決められており、次の通りです。

仲介手数料上限(取引額400万円以上の場合)=売却価格×3%+6万円+消費税

 

上記の計算は上限なので、上限以内であれば不動産会社は自由に設定できます。とはいえ、上限ギリギリで設定している不動産会社がほとんどでしょう。

値引き交渉は可能なので、売却にかかる費用を抑えたい場合は、値引き交渉するか、もともと仲介手数料の低い不動産会社を選ぶという方法もあります。

住宅ローン返済手数料

有償譲渡する不動産を住宅ローンや不動産投資ローンを組んで購入し、売却額でローンを完済する場合はローンの完成手数料が発生します。手数料は金融機関によって設定が異なり、5,000円~3万円が目安です。

ローンを組む際には、あらかじめ完済にかかる手数料についても把握しておくとよいでしょう。

司法書士費用

後述する抵当権抹消登記をする場合、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼する場合、費用として1~5万円ほどかかります。

費用を抑えるために自分でも手続き可能ですが、書類の準備や手続きなどが煩雑でもあるので、司法書士に依頼することをおすすめします。

仮に、3,000万円で不動産を売却した場合の費用は、次の通りです。

費用の合計 104万
費用の内訳 仲介手数料(上限) 96万円+消費税
住宅ローン完済手数料 3万円
司法書士費用 5万円
 

不動産の有償譲渡でかかる税金

有償譲渡でかかる税金の項目と目安額は、次の通りです。

名称 概要 金額
印紙税 売買契約手続きにかかる税金 1万円~10万円
住宅ローン返済手数料 ローンの完済にかかる手数料 5,000円~3万円
譲渡所得税 売却利益にかかる税金 譲渡所得×税率
登録免許税 抵当権抹消登記にかかる費用 不動産数×1,000円
 

印紙税

印紙税とは、課税対象の書類を作成した場合にかかる税金です。有償譲渡の場合、売買契約書が印紙税の対象となります。印紙税は、契約書に収入印紙を貼付・消印して納税し、記載された金額によって納税額も異なるので注意しましょう。不動産取引でよくある価格帯での印紙税は、次の通りです。

金額 納税額
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円
1億円超5億円以下 10万円
 

印紙税は、貼付忘れや消印忘れなどで納税しないと過怠税として本来の印紙税の3倍の額が課せられるので、注意しましょう。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、有償譲渡で利益が発生した場合にその利益に対して課せられる税金のことをいいます。譲渡所得税の詳しい計算方法については、後述するので参考にしてください。

登録免許税

売却により抵当権を抹消する場合、抵当権抹消登記のための費用として登録免許税が課せられます。抵当権抹消の場合は、不動産数×1,000円が必要になるため、土地と建物の場合は2,000円が必要です。

例えば、3,000万円で有償譲渡した場合(利益は発生せず)の税金を見ていきましょう。

税金の合計 1.2万円
税金の内訳 印紙税 1万円
譲渡所得税 なし
登録免許税 2,000円
 

上記の場合、1万2,000円の税金がかかります。先述した費用と併せると、合計約105万円の費用がかかっているのです。

このように、有償譲渡の場合にはさまざまな手数料が発生し、高額になってしまう可能性もあるので注意しましょう。

不動産を有償で他人に譲渡(売却)する際の主な流れ

譲渡とは|贈与・売却・相続との違いや有償譲渡の流れを解説!

有償で他人に譲渡する場合の大まかな流れは、次の通りです。

  • 1.不動産の査定を依頼
  • 2.価格の決定
  • 3.媒介契約
  • 4.売買契約
  • 5.決済・引き渡し
  • 6.確定申告
 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.不動産の査定を依頼

まずは、不動産がどれくらいの価格で売れるのかを査定してもらいます。査定方法には、机上査定と訪問査定の2種類があります。

  • ・机上査定:データのみで査定する簡易な査定
  • ・訪問査定:実際に家の内部を確認して査定する方法
 

机上査定は、築年数などの簡単なデータで査定する方法です。インターネットなどから簡単に短時間で査定できるので、おおよその目安額を立てるのに適しています。ただし、不動産ごとの個別の状態は考慮されないため、最終的な査定額とは大きく異なる場合もあるので注意しましょう。

訪問査定は、実際に不動産会社に不動産を確認してもらって査定を受ける方法です。内部などを細かくチェックして査定するため、査定の精度は高くなります。一般的には、机上査定で複数に査定依頼して、その中から2~3社に絞って訪問査定を受ける流れが多いでしょう。

査定は最初から1社に絞るのではなく、机上査定の段階ではできるだけ多くの不動産会社の査定結果を比較して検討することが大切です。複数に査定依頼するなら、一括査定サイトを活用するとよいでしょう。おすすめは「SUUMOの無料一括査定」です。簡単な入力で一度に複数の不動産会社の査定結果を入手できるので、手間や時間をかけずに高値で売却できる不動産会社にであえます。

2.価格の決定

査定結果をもとに、売却額を決めていきます。売却額は不動産会社と相談しながら決めますが、査定結果をそのまま反映する必要はありません。売却額は、基本的に売主が自由に決めることが可能です。

しかし、相場とかけ離れて高値を付けても売却は難しいでしょう。どれくらいの価格が適正なのか相場感をつけるためにも、査定時点で複数の不動産会社の査定額を見ておくことが大切になるのです。

3.媒介契約

売り出す価格が決まれば、不動産会社との媒介契約に進みます。媒介契約には次の3種類があります。

  • ・一般媒介契約
  • ・専任媒介契約
  • ・専属専任媒介契約
 

それぞれ特徴が異なるので、自分に合った契約方法を選ぶようにしましょう。

一般媒介契約

一般媒介契約では、複数の不動産会社との契約が可能です。売主が自分で買主を見つけてくることも可能なので、比較的縛りの少ない契約方法といえます。

ただし、一般媒介契約では不動産会社によるレインズへの登録義務や売却活動の報告義務がありません。

また、複数の不動産会社と契約できることから不動産会社の優先度が落ちてしまう可能性もあるので、注意しましょう。

専任媒介契約

専任媒介契約の場合、売主は不動産会社1社としか契約を結べません。不動産会社にはレインズへの登録義務は売却活動の報告義務が生じるため、売却活動を把握しやすいというメリットもあります。

また、専任媒介契約では売主が買主を見つけることの可能です。

関連記事:専任媒介契約とは|特徴やメリットを知って利用価値を確認!

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、専任媒介契約よりもさらに縛りが厳しくなる契約です。不動産会社1社のみとしか契約できず、売主が買主を見つけることもできません。

ただし、レインズへの登録義務や売却活動の報告義務はより短期間に縛られており、手厚いサポートも期待できるでしょう。

4.売買契約

売却活動を経て買主と条件が一致すれば、売買契約に移ります。不動産会社による重要事項説明を受けたのち、売買契約書への署名・押印をして契約締結となるのです。

売買契約の際には、買主から手付金が支払われます。この手付金は、解約手付の役割を持つものです。買主が契約を解除する場合は手付金の放棄、売主が契約を解除する場合は手付金の2倍の額の支払いで解除が可能になります。ただし、手付金で解約できる期日が決まっているので、期日などは契約書できちんと確認するようにしましょう。

また、不動産会社によっては売買契約のタイミングで仲介手数料の支払いが必要な場合もあります。仲介手数料に支払いタイミングは、決済時に全額か売買契約時と決済時で分けて支払う方法が一般的です。タイミングは不動産会社によって異なるので、事前にタイミングと金額・支払い方法について確認するようにしましょう。

5.決済・引き渡し

売買契約からおよそ1ヵ月後に決済・引き渡しとなります。決済時に手付金を差し引いた残代金が支払われ、物件を引き渡して有償譲渡完了です。

売却金でローンを完済する場合、決済と同時にローンの完済・抵当権抹消手続きも行います。

6.確定申告

不動産の売却で利益が出た場合、譲渡所得税が課せられるため確定申告が必要です。確定申告は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までの期間で所轄の税務署に申告します。

譲渡所得税には、さまざまな控除の特例があるので活用することで、税負担を大きく軽減することが可能です。

譲渡所得税を軽減できる特例には、次のようなものがあります。

【確定申告の際に利用できる可能性がある特例】
3,000万円特別控除
マイホームを売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例。

仮に、売却利益が3,500万円なら3,500万円-3,000円=500万円が課税対象となるので大きな節税が期待できます。ただし、この特例を適用するにはマイホームの売却であること以外にも、次のような要件があるので注意しましょう。

  • ・ 自分が住まなくなってから3年後の12月31日までの売却
  • ・ 売却した年・前年・前々年に他の特例を利用していない
  • ・ 買主が親子や夫婦などの特別な関係ではない
 

参照:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例

 

相続空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却した場合、最大3,000万円控除できます。この特例の適用条件として、次のようなものがあります。

  • ・ 被相続人が相続開始まで1人で居住、あるいは老人ホームなどに入所する直前まで1人で居住していた
  • ・ 相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡
  • ・ 昭和56年3月31日以前の建築である
  • ・ 対象の家屋を除去か耐震改修したうえで譲渡する
 

参照:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

 

10年超所有軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、譲渡所得税の税率を軽減することが可能です。この特例では、売却額6,000万円以下の部分の税率を20.315%から14.21%に引き下げられるのです。

特例の適用条件としては、次のようなものがあります。

  • ・ マイホームの売却であること
  • ・ 所有期間が10年を超えていること
  • ・ 自分が住まなくなってから3年後の12月31日までの売却
  • ・ 売却した年・前年・前々年に他の特例を利用していない
  • ・ 買主が親子や夫婦などの特別な関係ではない
 

参照:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

上記のような特例を適用することで譲渡所得税を軽減できます。特例の適用には確定申告が必要なので、忘れずに申告するようにしましょう。

譲渡所得税とは

譲渡とは|贈与・売却・相続との違いや有償譲渡の流れを解説!

ここでは、譲渡所得税について詳しく解説していきます。

譲渡所得税とは、不動産を有償譲渡(売却)した場合の売却利益に課せられる所得税・住民税のことです。譲渡所得税の計算方法は、次の通りです。

  • ・課税譲渡所得=売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除
  • ・譲渡所得=課税譲渡所得×税率
 

まず、譲渡所得の対象となる課税譲渡所得を計算します。譲渡所得は、大まかには売却代金から不動産の購入にかかった費用と売却にかかった費用を差し引いたお金というイメージでよいでしょう。

取得費は、購入にかかった費用を指し、不動産の仲介手数料や印紙税などが含まれます。譲渡費用は、売却にかかった費用となり仲介手数料などが該当するのです。

ただし、取得費は不動産を現在の価値で購入した場合で計算する必要があるため、建物の場合減少分の価格である減価償却費を足し戻す必要がある点に注意しましょう。

仮に、次の条件の売却の場合の課税譲渡所得を計算します。

  • ・売却額4,000万円
  • ・取得費3,500万円
  • ・譲渡費用200万円
 

課税譲渡所得=4,000万円-(3,500万円+200万円)=300万円

 

この場合、300万円が譲渡所得の対象です。ただし、先述した控除の特例を適用できる場合は、ここからさらに減額できます。

課税譲渡所得が分かれば、税率を乗ずることで納税額が算出できます。

税率は不動産の所有期間に応じて異なり、次の通りです。

所有期間 所得税 住民税 税率合計
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年超え 15.315% 5% 20.315%
 

所有期間が5年かどうかで税率が大きく異なるので注意しましょう。所有期間は、譲渡した年の1月1日を基準に算定する点には気を付ける必要があります。

では、先の例の物件の所有期間が次の場合の税金を計算してみましょう。

  • ・取得年月日2015年5月1日
  • ・譲渡年月日2020年5月31日
 

実際の所有期間は5年経過してしますが、基準となる2020年1月1日時点では5年経過していないため短期譲渡所得がかかります。適用する特例がない場合、譲渡所得税は次のようになります。

短期譲渡所得の税額:300万円×39.63%=118万8,900円

 

この場合約120万円と高額な譲渡所得税となってしまうのです。

譲渡所得税の計算は複雑になりがちです。自分での確定申告に不安がある場合は税理士などに相談して進めることをおすすめします。

不動産の譲渡に関するよくある質問

譲渡とは|贈与・売却・相続との違いや有償譲渡の流れを解説!

最後に、不動産の譲渡に関するよくある質問を見ていきましょう。

譲渡契約と売買契約の違いは?

譲渡契約書は有償・無償問わず対象のものの権利を譲り渡すための契約です。一方、譲り渡す対価として金銭を得る場合が売買契約となります。

不動産取引では、基本的に有償譲渡は売買となるので売買契約になるのです。

譲渡所得税はだれが払う?

譲渡所得税を支払うのは譲渡したことにより利益を得た人であり、譲渡(売却)した人が支払う義務を負います。譲渡した年の翌年に確定申告して納税します。

譲渡して利益が出ない場合は、譲渡所得税は発生しないので確定申告不要です。ただし、赤字が出る場合でも確定申告することで適用できる特例もあるので、専門家に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

不動産の譲渡について、譲渡の流れやかかる費用・税金などをお伝えしました。

譲渡とは有償・無償に関わらず権利を誰かに譲り渡すことを指しますが、不動産取引においては有償取引を譲渡というのが一般的です。有償贈与(売却)には、さまざまな費用や税金がかかるので、かかる費用について理解しておくことで利益を少しでも多く手元に残せるようになるでしょう。

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