
そこで、この記事では家の売却で発生する税金について分かりやすく解説します。併せて適用できる控除についても紹介するので、売却時の税負担を減らす参考にしてください。
家の売却で発生する税金

家を売却した場合にかかる税金としては、次のようなものがあります。
- ・消費税
- ・印紙税
- ・所得税・復興特別税
- ・住民税
- ・登録免許税
それぞれ詳しく見ていきましょう。
消費税
消費税は消費に対して課せられる税金で、対象となる取引は、主に「国内の取引」で「事業者が対価を得る取引」です。不動産売却の場合、売主が個人であれば売却自体に消費税はかかりません。しかし、次の取引は消費税の対象となるので注意しましょう。
- ・不動産会社への仲介手数料
- ・司法書士への依頼料
- ・ローンの完済手続きの手数料
また、不動産を売却するのが個人事業主や法人といった事業者の場合や投資用不動産の売却の場合は、売却にも消費税がかかってくるので注意が必要です。
印紙税
印紙税とは、課税対象の文章を作成した場合に課せられる税金です。不動産売却の場合は、売買契約書が課税対象となります。
印紙税は、契約書に税額分の収入印紙を貼付・消印することで納税します。納税額は、契約書に記載する金額(売却額)によって異なり、不動産取引での主な価格帯の税額は以下の通りです。
記載金額 | 税額(本則) | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | ||||||||||
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | ||||||||||
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | ||||||||||
1億円超5億円以下 | 10万円 |
契約書は基本的に売主・買主でそれぞれ作成して保管することとなり、それぞれの保管分の収入印紙代を納めるのが一般的です。印紙税の負担割合についてはトラブルに発展しやすいので、事前に不動産会社に確認するようにしましょう。
また、印紙税は、収入印紙の貼付忘れや消印忘れで納税していない場合、過怠税として本来の税額の3倍を納めるペナルティがあるので注意しましょう。
所得税・復興特別税
所得税とは、所得に対して課せられる税金です。家の売却の場合、売却の利益は譲渡所得と呼ばれ譲渡所得税の対象となります。
また、特別復興税とは東日本大震災の復興財源確保のために新設された税金のことです。2013年にスタートし2037年12月31日まで、所得税に税率2.1%乗じた額が徴収されます。基本的には復興特別税は所得税に含まれる形で算出されます。譲渡所得税の計算方法については後述するので参考にしてください。
住民税
住民税とは、住んでいる自治体の行政サービスなどに充てられる税金で各自治体に収める地方税です。家の売却では、譲渡所得税同様に譲渡所得に対して住民税が課せられます。
住民税の税率は不動産の所有期間に応じて異なりますので、譲渡所得税と一緒に後ほど詳しく解説します。
登録免許税
登録免許税とは、登記の際の手数料として納める税金です。
家の売却の場合、次の2つの登記が必要になります。
- ・所有権移転登記
- ・抵当権抹消登記
家を売却して買主に新たに所有権が移る際の登記が、所有権移転登記です。また、抵当権が付いたままの不動産は売却できないため、抵当権がある場合は抵当権抹消登記も必要になります。それぞれの登録免許税は、次の通りです。
- ・所有権移転登記:固定資産税評価額×0.2%
- ・抵当権抹消登記:不動産個数×1,000円
所有権移転登記については、基本的に買主の負担となるため売却時に支払う必要はないでしょう。抵当権抹消登記は、土地と建物の場合は2,000円必要になります。
登記の申請手続きは基本的に司法書士に依頼するため、司法書士費用もかかる点には注意しましょう。自分で登記手続きをすれば司法書士費用は必要がありませんが、手続きには手間がかかり素人には難しい場合もあるので司法書士への依頼をおすすめします。
譲渡所得とは

家の売却にかかる税金で最も大きな割合を占めるのが、譲渡所得にかかる所得税です。そもそも譲渡所得とは、不動産に限らず株式などの所有物を売却して得られる所得を指します。
ただし、「売却した価格=譲渡所得」というわけではありません。譲渡所得は売却で得た利益に部分のことを指すため、売却代金から取得にかかった費用などを差し引いた部分が譲渡所得となるのです。
例えば、3,000万円で家を売却した場合、家の取得に2,500万円かかっているのであれば、差額の500万円が譲渡所得となります。
不動産売却の譲渡所得は、ほかの所得とは別で計算する分離課税の対象です。また、譲渡所得がマイナスの場合、所得税は課税されません。
譲渡所得については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事:譲渡所得とは?不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法をケース別に解説
譲渡所得税の計算方法

ここでは、譲渡所得税の計算方法について詳しく見ていきましょう。譲渡所得税は次の計算で求められます。
- ・課税対象譲渡所得=家の売却額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
- ・譲渡所得税=課税対象譲渡所得×税率
譲渡所得の算出
まずは、課税対象となる譲渡所得を算出します。譲渡所得は、大まかには売却額から購入にかかった費用と売却にかかった費用を差し引いた部分とイメージしてよいでしょう。
譲渡所得=家の売却額-(取得費用+譲渡費用)
家の売却価格
家の売却価格とは、実際に家を売却した際の価格のことです。また、売却額だけでなく固定資産税・都市計画税の清算金を得た場合はその金額も含まれます。
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に納税の義務があるため、年の途中の売却の場合は所有期間に応じて按分するのが一般的です。
清算金は、物件の決済時に買主から支払われます。例えば、家の売却が2,000万円で固定資産税の清算金を10万円得た場合は、2,010万円が収入として譲渡所得を計算するのです。
家の売却価格は家が売却するまでいくらになるかは分かりません。しかし、どれくらいの税金がかかるのかはあらかじめ把握しておきたいものです。これから売却を検討している場合は、まずは査定で売却額の目安を立てると所得税の計算もしやすくなります。このとき、できるだけ多くの不動産会社に査定に出すことで相場が見えてきます。
複数の不動産会社に査定を出すなら、一括査定サイトの「SUUMOの無料一括査定」がおすすめです。簡単な入力だけで一度に複数の不動産会社の査定結果を得られるので、効率よく比較できるでしょう。
取得費用
取得費用とは、家の購入の際にかかった費用のことを指します。家の代金だけでなく、次のような費用も含まれます。
- ・登録免許税
- ・印紙税
- ・不動産会社への仲介手数料
- ・総勢費用や測量費など
取得費を計算するには、領収書などの書類が必要になります。実際の所得費が分からない場合は、概算取得費として売却収入の5%を計上できます。しかし、概算取得費は実際の取得費よりも大幅に少ないことが多く、その分利益が出てしまい税金も増えてしまう点に注意しましょう。
また、取得費を計算するうえで注意しなければならないのが、建物の取得費は減価償却分を差し引くという点です。建物は経年劣化により価値が減少します。家の所有期間で減少した価値は売主がその分を享受したことになるため、その分の費用として減価償却費を差し引く必要があるのです。
ただし、土地は年数がたっても価値が減少することはないので減価償却は差し引きません。そのため、取得費を計算する際には土地と建物を分けて計算する必要があるのです。
取得費=土地の取得費+(建物の取得費-建物の減価償却分)
譲渡費用
譲渡費用とは、売却の際にかかった費用のことをいい、次のような費用が該当します。
- ・不動産会社への仲介手数料
- ・印紙税
- ・立ち退き料や取り壊し料など
これらの費用の領収書などは、しっかりと保管しておくようにしましょう。
例えば、次の場合の譲渡所得を算出していきます。
- ・売却額4,000万円
- ・土地の取得費1,500万円
- ・建物の取得費2,000万円
- ・建物の減価償却1,000万円
- ・譲渡費用200万円
この場合の譲渡所得は、次の通りです。
譲渡所得=4,000万円-{(1,500万円+2,000万円-1,000万円)+200万円}=1,300万円
譲渡所得税を求める
譲渡所得に税率をかけることで譲渡所得税を算出できます。
譲渡所得税の税率は所有期間に応じて異なり、次の通りです。
所有期間 | 所得税・ 特別復興税 |
住民税 | 合計税率 | ||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% | |||||||||||||||||||||||||
長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
仮に、先ほど求めた譲渡所得1,300万円で短期・長期の譲渡所得税を算出すると、次のようになります。
- ・短期譲渡所得:1,300万円×39.63%=5,151,900円
- ・長期譲渡所得:1,300万円×20.315%=2,640,950円
所有期間を判断する際には、基準日が売却した年の1月1日という点に注意が必要です。
仮に、取得日が2015年6月1日、売却日が2020年6月2日である場合、実際の所有期間は5年を超えています。しかし、基準日である2020年1月1日時点では5年経過していないため、短期譲渡所得の税率が計算しなければならないのです。
譲渡所得税は、所有期間によって税額が大きく異なります。売却を検討する際には所有期間も意識して、時期を検討するようにしましょう。
利用可能な特別控除を知る
譲渡所得税にはさまざまな控除があり、適用することで税額を大きく減らすことが可能です。適用できる控除として、主なものには次のようなものがあります。
- ・3,000万円特別控除
- ・軽減税率特例
- ・損益通算特例
3,000万円特別控除
マイホームの売却の場合、譲渡所得から最大3,000万円控除できる特例が3,000万円特別控除です。
仮に、譲渡所得が3,500万円の場合、この特例を適用することで3,000万円を控除でき、差額の500万円が課税対象となります。マイホームの売却の場合、この特例を適用することで所得税がほとんどかからないケースが多いでしょう。
ただし、適用にはマイホームの売却であること以外にも次のような条件があります。
- ・住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
- ・買主が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
- ・他の特例を適用していないこと
詳しくは、以下の国税庁のサイトをご確認ください。
参照:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
軽減税率特例
マイホームの売却で所有期間が10年を超える場合、税率を軽減する特例です。
軽減後の税率は次のようになります。
譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 合計 | ||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6,000万円以下 | 10.21% | 4% | 14.21% | ||||||||||||||||||||||||||
6,000万円超え | 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% | |||||||||||||||||||||||||
6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
譲渡所得が6,000万円以下の部分の税率を20.315%から14.21%に引き下げることが可能です。
この特例を適用するための条件には次のようなものがあります。
- ・マイホームの売却であること
- ・所有期間が10年を超えていること
- ・住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
- ・買主が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
- ・他の特例を適用していないこと
この特例は3,000万円特別控除と併用が可能です。併用することで大きく所得税を減額できるので、該当する場合は条件を確認してみるとよいでしょう。
詳しくは、以下の国税庁のサイトをご確認ください。
参照:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
損益通算の特例
譲渡所得税は譲渡所得が出た場合のみ課税されるため、譲渡所得が赤字の場合は課税されません。そのため、赤字の場合は確定申告が不要です。
しかし、赤字でも確定申告することによって節税が見込める特例があります。それが「買い替えの特例」です。
この特例では、マイホームを売却して損失が出ており、新たな住宅をローンで購入した場合に、損失分を損益通算できるようになります。
仮に、損失が1,500万円あり、給与所得が500万円なら損益通算で所得ゼロになり所得税がかからなくなるのです。
また、その年だけでは控除しきれなかった分は翌年以降最大3年間繰越せるため、大きな節税効果が見込めます。この特例の適用条件としては、次のようなことがあります。
- ・売却損が出ている
- ・返済期間10年以上のローンを組んで新たな住居を購入している
- ・買い替えた住居は床面積50㎡以上であること
- ・買主が親子や夫婦などの特別な関係でないこと
- ・他の特例を適用していないこと
詳しくは、以下の国税庁のサイトをご確認ください。
参照:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡所得税のシミュレーション

以下では譲渡所得税の早見表として、譲渡所得別に短期譲渡所得・長期譲渡所得の税額を一覧でまとめています。どれくらいの譲渡所得税がかかるのかの参考にしてみてください。
譲渡所得 | 所得税・特別復興税 | 住民税 | 合計 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
500万円 | 153万1,500円 | 45万円 | 198万1,500円 | ||||||||||||||||||||
1,000万円 | 306万3,000円 | 90万円 | 396万3,000円 | ||||||||||||||||||||
2,000万円 | 612万6,000円 | 45万円 | 198万1,500円 | ||||||||||||||||||||
3,000万円 | 918万9,000円 | 270万円 | 1,188万9,000円 | ||||||||||||||||||||
4,000万円 | 1,225万2,000円 | 360万円 | 1,585万2,000円 | ||||||||||||||||||||
5,000万円 | 1,531万5,000円 | 450万円 | 1,981万5,000円 |
譲渡所得 | 所得税・特別復興税 | 住民税 | 合計 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
500万円 | 76万5,750円 | 25万円 | 101万5,750円 | ||||||||||||||||||||
1,000万円 | 153万1,500円 | 50万円 | 203万1,500円 | ||||||||||||||||||||
2,000万円 | 306万3,000円 | 100万円 | 406万3,000円 | ||||||||||||||||||||
3,000万円 | 459万4,500円 | 150万円 | 609万4,500円 | ||||||||||||||||||||
4,000万円 | 612万6,000円 | 200万円 | 812万6,000円 | ||||||||||||||||||||
5,000万円 | 765万7,500円 | 250万円 | 1,015万7,500円 |
家を売る際の税金に関するよくある質問

最後に、家を売る際の税金に関するよくある質問を見ていきましょう。
1,500万円で購入した土地を12年後に2,000万円で売却した場合の譲渡所得税はいくらになる?
譲渡費用や特例などを考慮しない場合、単純な譲渡所得は500万円となります。所有期間が12年と長期譲渡所得となるので、500万円×20.315%=101万5,750円が譲渡所得税となるのです。
家を売却することで発生する税金はいつ払うの?
印紙税や登録免許税は、契約時や手続きの際に支払うことになります。譲渡所得税は、売却した翌年の確定申告で、申告・納税する必要があります。
確定申告時期は、2月16日から3月15日の期間となるので、期間内に申告できるように準備を進めておきましょう。
家を売却して確定申告をしなかったらどうなる?
譲渡所得がある場合で確定申告しなかったら、「無申告加算税」というペナルティが課せられます。税務署の調査で申告していないことが判明すると、税務署が厳格な基準で納税額を算出し、さらにペナルティ分も加算されてしまうので、忘れずに申告するようにしましょう。
譲渡所得の計算でマイナスが出た場合は確定申告は不要ですが、マイナスでも確定申告することで節税のメリットがある場合もあります。譲渡所得税の計算や申告は難しい場合は、税理士や自治体の相談窓口で相談しながら進めるとよいでしょう。
まとめ
家を売却する際にかかる税金の種類や計算方法をお伝えしました。
家を売却した場合、印紙税や登録免許税・所得税などの多くの税金がかかります。特に譲渡所得税は、大きな割合を占める税金なので、その仕組みを理解して適用できる控除を活用して税額を抑えられるようにするとよいでしょう。
税金は高額になってしまう可能性もあるので、売却を検討する場合はどれくらいかかるのかを把握しておくことが大切です。査定額から税額をシミュレーションしておけば、後々高額な納税で困ってしまうという事態を防げるでしょう。
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