賃貸の退去費用の相場は?注意すべき「特約」とは?安く抑えるポイントの画像01

ここでは、

・国土交通省のガイドラインに基づいた退去費用の基準
・経年劣化を考慮した費用負担の計算方法
・具体的なトラブルの防止策
・退去費用を安く抑えるポイント

など、退去費用について詳しく解説しています。



賃貸の退去費用とは?

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退去費用は、借りていた部屋を原状回復(※)し、次の入居者が住める状態に戻すための費用を指します。

※原状回復
賃貸物件を退去するときは、借主の過失や故意で物件が損傷した部分を、元のきれいな状態に戻す必要がある「原状回復義務」が発生します。

退去費用は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によって細かく基準が明確化されています。そして、基本的にそれぞれの物件の賃貸借契約書は、これに基づいて作成されることが多いです。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

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:賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの
:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの
A(+G):基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの
⇒ このうち、B及びA(+B)については賃借人に原状回復義務があるとしました。

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、退去時の修繕費用を誰が負担するのか明記されています。

修繕費用負担の基準
「経年劣化や通常損耗」は貸主負担
「借主の故意や過失による損傷」は借主負担

注目すべきは、経年劣化や通常損耗の修繕費用は賃料に含まれているという考え方です。
このガイドラインでは、借主はそれらの費用を毎月賃料としてすでに支払っているため、退去時に二重に請求されることはないとされています。
さらに、建物や設備の経過年数を考慮して、古い物件ほど借主の負担を軽くする仕組みを設けています。

経過年数ごとの計算方法

経過年数ごとの原状回復費について、交換や張り替えなどをする場合の借主の負担割合は以下の通りです。

設備 耐用年数 経過年数 借主の負担分
流し台 5年 ・入居時点で新品
・3年間入居
5分の3の価値が経年劣化で消失
→支払義務は交換費用の5分の2
クロス 6年 ・入居時点で張り替えから3年経過
・2年間入居
6分の5の価値が経年劣化で消失
→支払義務は張り替え費用の6分の1
フローリング 22年
(木造建築)
・入居時点で張り替えてから8年が経過
・5年間入居
22分の13の価値が経年劣化で消失
→支払義務は張り替え費用の22分の9

【貸主負担】経年劣化や通常損耗の具体例

フローリング・畳・壁紙の日焼け
家具・家電の設置跡など、通常利用によるへこみ
テレビや冷蔵庫などによる電気焼け
壁に残った軽度の穴(画鋲やピンの跡)
エアコンの内部の汚れ
耐用年数超過後の設備の故障

【借主負担】故意・過失による損傷の具体例

紛失・破損による鍵の交換
窓周辺や水回りのカビ・腐食
クロスの傷・落書き
フローリングや畳、カーペットの傷・汚れ
タバコの臭い・焦げ跡・ヤニ汚れ
アロマオイルや線香、香水などの臭い
ドアや障子、網戸などの傷・破損

エアコンの水漏れや扉の不具合などは通常、貸主負担で修理するものですが、それらを放置したことで床や扉が傷んだ場合には借主の責任になります。なぜなら、異変や不具合があったら報告するのは借主の義務で、契約書にもそう書いてあるからです。
報告を怠って拡大した被害は故意・過失になるので注意しましょう。

借主の過失による損傷を、火災保険(借家人賠償責任保険)でカバーできるケースもあるよ。
火災保険は「◯万円を超えた分のみ使える」という場合が多いけれど、高額の場合は頼りになるので、どんなときに適用できるかチェックしておこう!

賃貸の退去費用の相場は?【間取り・広さ・居住年数】

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賃貸物件の退去費用の相場は、物件の間取りや広さ、居住年数によって異なります。また、実際の修繕の程度によってもかなり変動しますので、あくまで目安と捉えてください。

間取り 広さ 居住年数 相場費用の目安
ワンルーム~1K 20~30㎡ 3年未満 1万5000〜4万円
1LDK〜2DK 30~50㎡ 3年未満 4万〜7万円
2LDK〜3LDK 50~70㎡ 3年未満 7万〜12万円
ワンルーム~1K 20~30㎡ 4~5年以上 1万〜3万円
1LDK〜2DK 30~50㎡ 4~5年以上 3万〜5万円
2LDK〜3LDK 50~70㎡ 4~5年以上 5万〜8万円

一般的には間取りの広い物件ほど、クリーニングや修繕にかかる費用がかかるため、退去費用は高くなる傾向にあります。
一方で、借主の居住年数が長い場合には、経年劣化や通常損耗が考慮されて、退去費用は減額されます。

例えば、ワンルームや1Kの場合、3年未満の居住では退去費用の目安は1万5000〜4万円程度、4~5年以上では1万〜3万円程度が一般的です。
また、2LDK~3LDKのようなファミリー向けの間取りでは、3年未満で7万〜12万円程度、4~5年以上で5万〜8万円程度が目安となります。

退去費用は「特約」「物件ごとのルール」に左右される

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実際に退去する際、「退去費用ってこんなにかかるの?」と驚くことも。なぜなら、契約書の特約や物件ごとのルールによって、退去費用が大きく変動するからです。そのため、賃貸物件の契約時には契約内容の確認が非常に重要となります。

ここでは、注意すべき特約や物件ごとのルールを5つ紹介します。

①ハウスクリーニング費用

特約でよくあるのがハウスクリーニング費用の負担です。契約書に「故意・過失にかかわらず、ハウスクリーニング費用は借主が支払う」と書かれているケースが多いです。
ハウスクリーニング代は本来なら貸主が負担するものですが、以下の3つの条件を満たす場合には、借主が負担しなければなりません。

・「賃貸借契約書」内に、ハウスクリーニング費用を借主が負担する旨の記載がある
・契約書に記載されている負担金額が明確で、かつハウスクリーニングの相場に合った料金である
・仲介業者などから口頭説明があり、借主側も合意している

②【和室】畳・襖の交換費用

和室のある物件では、畳や襖に関する特約がないかチェックしましょう。
和室が一般的だった時代の名残で、退去時に畳の表替えや襖の張り替えを入居者が負担する特約のある地域があります。
地域差もありますが、畳や襖の交換費用は1枚5000~2万円程かかります。和室が2間以上あると畳や襖の枚数も多く、場合によっては敷金を超えてしまうケースも。
現在は、畳や襖に関する特約がない契約や、交換費用の負担を半額とする契約なども増えてきています。

③敷金と敷引き

敷金とは、家賃の滞納や原状回復費用などに充てるために預けておく費用です。家賃の滞納がなければ、原状回復費用を差し引いた残りの金額が退去後に返ってきます。
ただし、敷引き(しきびき)という名目で契約していた場合は、例外として返ってきません。敷引きは西日本に昔からある商慣習ですが、今は徐々に少なくなってきています。

④敷金なしの物件

敷金なしの物件では、入居時に敷金のかわりに「退去時のクリーニング代」などの名目でお金を預けておき、退去時に原状回復費用に充てられるケースが一般的です。
もし、預けていたクリーニング代を超えるような補修が必要になり、それが借主の故意・過失による損傷だった場合には、補修費用が別途請求されます

⑤ペット可の物件

ペットによる汚損・損傷も、借主が原状回復費用を負担します。特約があればそれに従いますが、なければ一般のガイドラインどおり、借主の過失として扱われます。

・猫が壁紙を引っ掻いた
・犬が建具をかじった

など、ペットによる汚損・損傷は原状回復費用が高額になることも。そのため、ペット可の物件は一般の物件よりも敷金が多めに設定されているケースが多いです。建具など、交換費用が高額になるものをペットに傷つけさせないように、特に注意しましょう。

また、ペットの臭いが強く残ってしまうと、専門業者の消臭作業代等が発生することもあるので、ペットのトイレトレーニングや粗相の後始末は入念にしましょう。

退去費用を相場より安く抑えるためのポイント

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退去費用を安く抑えるには、次の5つのポイントがあります。

①入居時の記録を徹底する
②賃貸契約内容とガイドラインを把握する
③定期的な掃除を行う
④退去時は必ず立会う
⑤費用の内訳を確認する

ここでは、それぞれ順番に内容を見ていきましょう。

①入居時の記録を徹底する

まずは、入居時に部屋の状態を写真や動画で記録して、元からあったキズや汚れの証拠を残しましょう。 これによって、原状回復の範囲について、トラブルになることを防げます。

②賃貸契約内容とガイドラインを把握する

賃貸契約を結ぶ際は、契約書をよく読んで、特約や原状回復の規定を正確に理解しておくことが重要です。分からない部分はその場で質問して、契約内容が正当か確認しましょう。
また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を把握していれば、 経年劣化や通常損耗による負担範囲を明確にできます

③定期的な掃除を行う

日頃から定期的に掃除を行い、部屋をきれいに保つことは、退去時の費用負担軽減に役立ちます。
特に、カビやシミなどの放置は、退去時に追加のハウスクリーニング代を請求されやすいポイントです。
また、備え付けの設備に故障が見つかった場合、借主に故意・過失があれば、修理・交換費用を請求される可能性があります。エアコンや食洗機などの設備はお手入れだけでなく、点検も行いましょう

④退去時は必ず立会う

退去時は必ず立会いを行い、部屋の状態を一緒に確認します。その場で記録を取り、入居時の状態と比較しながら修繕の必要箇所を確認することで、 トラブルを軽減できるでしょう。

⑤費用の内訳を確認する

退去費用の請求内容に不明点があれば、内訳の明細を要求しましょう。退去費用について余計なトラブルを防ぐためには、入居時と退去時の双方で、記録の保存とガイドラインに沿った明確な手続きが鍵となります。

退去費用の相場に関するQ&A

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ここでは、退去費用や相場について、

・退去費用に納得できないときの対処法
・退去費用は分割払いできる?
・退去費用で100万~200万円請求されるケースとは?
・市営住宅の退去費用は相場より高い?
・老人ホームの退去費用の注意点

などの疑問にお答えします。

Q.退去費用に納得できないときはどうする?

①見積書にサインせずに一度持ち帰る

借主側には、立会い時にすぐ見積書にサインする義務はありません。修繕負担額の割合に納得がいかなければ、サインせず、一度持ち帰って対応を考えましょう。

②家主や管理会社に確認・交渉する

退去費用に納得できなければ、家主や管理会社に確認したり、交渉したりすることも可能です。
修繕負担額についての不明点や納得できない点、入居時に控えていた記録などをまとめておくと、交渉をスムーズに進められます。

③専門機関に相談する

それでも解決できないときは、国民生活センター(消費者ホットライン)や日本消費者協会、弁護士などの専門機関に相談しましょう。
仮に、見積書にサインした後でも、専門機関に相談して負担費用の変更を依頼する権利はあります。

相談先 連絡先
国民生活センター(消費者ホットライン) 188
日本消費者協会 03-5282-5319
全国宅地建物取引業協会連合会 都道府県の宅建協会の不動産無料相談所
不動産適正取引推進機構 0570-021-030
日本賃貸住宅管理協会 問い合わせフォーム など
法テラス 0570-078374

Q.退去費用は分割払いできる?

基本的には退去費用は分割払いできず、一括払いで支払わなければなりません。一括払いできるように現金や口座振替などの準備しておきましょう。
どうしても一括払いできない場合には、家主や管理会社に相談して、分割払いにしてもらえないかお願いしてみてください。

Q.退去費用で100万~200万円請求されるケースはある?

一般人が住める程度の汚損や損耗で、退去費用が100万円以上請求されることはほぼありません。

ただ、いわゆる汚部屋で、

・風呂やトイレ、キッチンなどの水回りが一切使い物にならず、全て取り替える
・畳やフローリングも腐っている

などの場合には、100万以上請求されるケースも稀にあります。

退去費用に関して話し合いで解決できない場合は、民事調停や訴訟といった手段もあります。しかし、時間と費用がかかることから、なるべくなら話し合いで解決することが望ましいでしょう。

退去費用が高額で支払いが困難であっても、踏み倒しは厳禁です。連帯保証人や緊急連絡先に催促がきて、最悪の場合には訴えられることも。管理会社や家主にきちんと連絡をとり、放置することのないようにしてください。

Q.市営住宅の退去費用は相場より高い?

市営住宅などは、民間の賃貸住宅と異なり、

・経年劣化も原状回復の範囲に含まれる
・賃料の減免措置がある
・襖や畳、障子なども原状回復の対象となる

などの理由で、退去費用が相場より割高な傾向にあります。
市営住宅にこれから住む人や既に住んでいる人は、契約書の内容をよく読み、これらの事項をしっかり確認しておきましょう。

Q.老人ホームの退去費用の注意点は?

老人ホームの退去費用の内訳は、施設によって異なりますが、

・未払金
・備品の修繕費
・清掃費

などが、主に請求されます。

老人ホームであっても、基本は国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に則って退去費用が算出され、経年劣化は費用負担の対象外とされています。
ただし、施設によってはこれ以外に特別な費用を設けている場合もありますので、契約時にはその点を注意しましょう。

退去費用の相場を知ってお得に引越そう!

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退去時の原状回復費用をできるだけ抑えるには、部屋をきれいに掃除し、設備などを丁寧に扱うことが基本です。簡単に交換できないものや高額なものを汚損・破損しないように注意しましょう。住み始める段階から、物件を丁寧に扱う意識を持つことが大切です。

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