
また、退去費用については高額請求されるのではと心配な人も多く、実際に費用を巡ってトラブルに発展するケースも珍しくありません。費用の内訳や相場を把握しておくことで、費用を抑えつつ円満に退去できるようになります。
この記事では、賃貸アパートの退去費用の内訳と相場やトラブル例を分かりやすく解説していきます。併せて、費用を抑えるコツも紹介するので退去の際の参考にしてください。
アパートの退去費用の相場

まずは、退去費用の相場を見ていきましょう。相場は居住年数や間取りによっても異なるので、それぞれで解説していきます。
居住年数による違い
居住年数による退去費用の違いを一覧で確認しましょう。
居住年数 | 相場 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1~3年 | 4万9,431円 | ||||||||||
4~6年 | 6万1,694円 | ||||||||||
7年~ | 8万7,090円 |
居住年数が長くなるほど建物の損傷も触れるので退去費用は高くなります。しかし、築年数も経過することで建物自体も経年劣化するため、3年までが5万円程に対して7年で8.7万円と費用の増加率は抑えられる傾向があるのです。
間取りによる違い
次に、間取りによる退去費用の違いを確認していきましょう。
間取り | 相場 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ワンルーム・1K・1DK・1LDK | 4万9,980円 | ||||||||||
2K・2DK・2LDK | 7万9,924円 | ||||||||||
3DK・3LDK・4DK・4LDK | 9万0,139円 |
退去費用は、原状回復やハウスクリーニングの費用が主になるため、間取りが広くなればその分コストがかさみます。
アパートの退去費用の内訳

そもそも退去費用とはどのような費用なのでしょうか。退去費用の内訳は大きく次の2つです。
- ・原状回復費用
- ・ハウスクリーニング費用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原状回復費用
原状回復費用とは、住み始める前の状態に戻すための費用のことです。ただし、借りる前と全く同じ状態に戻す必要はありません。国土交通省のガイドラインによると原状回復は、次のように明記されています。
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
引用:国土交通省|「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
つまり、通常の使用による損耗や経年劣化は原状回復の範囲に含まれないのです。
原状回復費用は、何を補修するのかによっても相場が異なります。主な項目の費用相場は次の通りです。
項目 | 相場 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
フローリング張替え | 8~12万円 | ||||||||||
壁紙の張替え | 700~900円/㎡ | ||||||||||
カーペットの張替え | 4~6万円 | ||||||||||
ふすまの張替え | 3,000~5,000円/枚 | ||||||||||
床材の張替え | 8,000~1万円/枚 | ||||||||||
トイレの水垢・カビの除去 | 5,000~8,000円 | ||||||||||
浴室の水垢・カビの除去 | 1~2万円 | ||||||||||
キッチンの油汚れの除去 | 1.5~3万円 | ||||||||||
柱の補修 | 1~4万円 |
ただし、原状回復の費用は必ずしも借主が全額負担するわけではありません。なかには貸主の負担となる項目もあるので、理解しておくようにしましょう。
借主負担になるもの
原状回復のガイドラインにあるように、対象の項目は通常の利用の範囲を超えた使用による損傷や善管注意義務違反の範囲です。善管注意義務とは、通常期待できる程度の注意義務のことを指します。故意に破損した場合やうっかりで壊したものは借主が負担する原状回復費用の対象となるのです。
原状回復費用が請求される主な原因としては、以下のようなことが挙げられます。
- ・手入れを怠ったことによるキッチンや浴室・トイレの汚れ
- ・壁紙や床への落書き
- ・壁などのねじ穴やくぎ穴
- ・飲み物などをこぼした際のカーペットのシミや株
- ・結露を放置してできた壁の腐食やカビ
- ・たばこによる壁紙の変色
- ・家具による床や壁のキズ
- ・日常の手入れ不足による設備の故障
上記のような行為で損傷した場合は原状回復の対象となる可能性が高いでしょう。また、壁紙などは張り替えるとなると全面的に張替えになる場合もあり、費用が高額になることもあるので注意が必要です。
ただし、契約時に特例などで原状回復について定めていた場合は特例が優先されます。退去前には契約書を確認するのはもちろんですが、契約前の段階で契約書の内容はしっかりと確認しておくようにしましょう。
貸主負担になるもの
借主の故意やうっかりにより損傷以外は基本的に貸主が負担することになります。主な原因としては、次のようなことが挙げられます。
- ・壁や床・畳の変色
- ・フローリングの色落ち
- ・家具を配置した凹みや跡
- ・家電設置による壁の黒ずみ
- ・エアコン設置による壁の穴
- ・経年劣化による設備の故障
- ・自然災害によるガラスや壁の破損
上記のように、通常の使用の範囲内や経年劣化による損傷は、貸主負担となるのが一般的です。また、次の入居者のための鍵交換やエアコン洗浄などの準備は貸主負担となります。
ハウスクリーニング代
ハウスクリーニング代とは、専門の業者に依頼して部屋を清掃する際の費用のことです。床や壁・水回りなどを専用の洗剤などを使用してきれいにしていきます。ハウスクリーニングの主な例としては次のようなものがあります。
- ・フローリングの清掃・ワックスがけ
- ・壁紙の清掃
- ・キッチン・トイレ・浴室など水回りの清掃
- ・窓や網戸・ベランダの清掃
- ・消臭や除菌
- ・玄関周りや床・下駄箱の清掃
- ・エアコン清掃
ハウスクリーニングは部屋全体ではなく、汚れの程度によって部分的にする場合もあります。
ハウスクリーニング費用は汚れの程度や範囲、依頼する時期によっても大きく異なります。引越しシーズンなどハウスクリーニングの需要が高まる時期は、費用も高くなる場合があるので注意しましょう。
なお、退去時のハウスクリーニング費用の負担については、原状回復費用同様に通常の清掃や手入れを実施せずに付いた汚れの部分が借主の負担する部分です。ただし、契約時に「ハウスクリーニング費用○○円を負担する」などと特例で定めているケースも多く、特例がある場合は特例が優先されるので注意しましょう。
アパートの退去費用に関するトラブル事例

アパートの退去費用を巡ってトラブルに発展するケースも珍しくありません。どのようなトラブルがあるのかを理解しておくことで、トラブルを避けやすくなるでしょう。
ここでは、主なトラブルとして次の3つの事例とその対応や対策を紹介します。
- ・入居前からある傷の修繕費を請求される
- ・敷金の差額分が返金されない
- ・法外な金額を請求される
入居前からある傷の修繕費を請求される
入居前からすでにあった傷の修繕費用を請求されるケースは多くあります。請求される要因としては、貸主と借主の認識が異なることが挙げられます。
入居時の物件確認時には、貸主と管理会社も立ち合い現状を確認しておくようにしましょう。また、確認だけでなく間取り図へのキズの記載や写真の撮影を行い、その記録を管理会社に保管してもらうことも有効です。
敷金の差額分が返金されない
賃貸アパートに入居する際には、「敷金」「礼金」を支払うものです。これらの費用の意味は、次の通りです。
- ・敷金…退去時の原状回復費用として払う費用
- ・礼金…貸主への謝礼金
礼金は貸主へのお礼のお金なので返ってくることはありません。一方、敷金は、原状回復のための費用であり、原状回復費用を差し引いた額は返還されます。しかし、敷金が返ってくるお金という認識が低いため、貸主や管理会社の中には返還しないケースもあります。
敷金の返金がない場合は、まず契約書を確認しましょう。契約時に「敷金は返金しない」「ハウスクリーニングで全額使用する」なども記載があれば返金されません。特に記載がない場合は、不動産会社に問い合わせてみることで返金される可能性があります。
法外な金額を請求される
よくあるトラブルが「高額請求」です。ハウスクリーニングなどの名目で、数十万円請求されるケースもあります。請求されてしまうと、住んでいたから仕方ないと考えがちですが、先述したように原状回復費用やハウスクリーニング費用で負担すべきは通常の使用を超えた範囲です。このようなルールを知らないことで高額請求に応えてしまう場合もあるので、注意しましょう。
退去時に高額請求にあわないためにも、入居前の契約書は十分に確認する必要があります。「退去時のハウスクリーニング費用は全額負担」と特例があると、高額請求でも支払わざるをえなくなってしまうので注意しましょう。そのような特例や記載がない場合は、請求額全額を支払う必要はありません。
高額請求を受けた場合は、請求の内訳を確認し、管理会社や貸主と交渉することで、減額できる場合があります。自分での交渉が難しい場合は、消費生活センターに相談してみるとよいでしょう。
とはいえ、自分で傷つけた分などは支払う必要がある点は忘れずに、金額の内訳をしっかり確認することも大切です。
アパートの退去費用を抑えるコツ

アパートの退去費用は、次の生活もあるのでできるだけ抑えたいものです。退去費用はちょっとした対策や交渉などで抑えられる場合があります。
退去費用を抑えるコツとして、次の3つが挙げられます。
- ・退去前に掃除を徹底しておこなう
- ・修繕できる部分は自分でおこなう
- ・管理会社との交渉を試みる
ただし、契約内容などによっては費用を安くできない場合もあるので、契約内容は事前に確認しておくようにしましょう。
退去前に掃除を徹底しておこなう
目立つ範囲の汚れを落としておくだけでもハウスクリーニング費用を抑えることが可能です。また、退去前だけでなく日常的に清掃や設備のメンテナンスをしておくようにしましょう。
小まめに清掃しておけば退去時の清掃も楽になりますが、汚れを蓄積していれば自分だけでは手に負えなくなるものです。
修繕できる部分は自分でおこなう
小さい壁の穴や床の傷といった自分で修繕できる範囲のものであれば、自分で修繕しておくのもおすすめです。ホームセンターなどで補修材が手に入るので、補修しておくとよいでしょう。
ただし、補修に失敗すると汚れや傷が広範囲に張ってしまうなどで、より退去費用がかさんでしまう原因にもなりかねません。自分で補修する場合は、目立たない場所でチェックしてから補修するようにしましょう。
また、自分で補修できないような傷であっても、自分で内装会社などを探して補修しておくと退去時の費用よりも安くで済む場合もあるので、検討するのもおすすめです。
管理会社との交渉を試みる
退去費用は管理会社との交渉で安くできる可能性があります。とはいえ、むやみに安くしてほしいと交渉しても受け入れてもらえないでしょう。
退去費用の内訳を確認し相場と比較してどうなのか、必要な項目なのか、また、入居時の状態の資料の用意など、しっかりとした根拠があれば減額できる場合があります。
交渉のタイミングは退去立ち合いや費用の請求を受けた際になるので、あらかじめ大まかな費用を確認して交渉の準備をしておくとよいでしょう。
まとめ
今回は、アパートの退去費用についてお伝えしました。アパートの退去費用は、原状回復費用とハウスクリーニング費用となり、居住年数や間取りによっても相場が異なります。
ただし、すべての費用を借主が負担すべきなのではなく、負担するのは通常の使用を超えて付いた損傷分です。原状回復などのルールを理解しておくことで、高額請求を避けられるのでこの記事を退去の際の参考にしてください。
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