
無理のない予算を立てないと苦しむことになる
家を購入する際、大半のケースでは住宅ローンの借り入れを活用することになります。その場合、購入後には長い期間にわたって住宅ローンの返済をすることになるわけです。返済期間はローン商品やケースによってさまざまですが、35年で組まれることが多く、その道程は長いものになります。
しかし、家を購入すればそれでいいというものでは当然なく、普段の生活にもお金はかかりますし、老後に向けて貯金も考えていかなければなりません。お子さんのおられる家庭であれば、お子さんの成長にともなう教育費についても考えなければならないでしょう。
購入資金で無理をしてローンの借り入れを増やしてしまうと、毎月支払っていく金額が重くなります。「ちょっとぐらいなら」と思っても、実際払いはじめてみるとその負担は思ったより重く感じることもあるはずです。
また、事故に遭ったり日本の経済環境の変化などによって、就業状況や収入が影響を受けるという可能性もゼロではありません。そうなれば、当初の予定どおりにローンの返済をすることが困難になると考えられます。
ライフプランを書き出して予算を考えよう
もし万一前述のような事態になり、ローンの返済が滞ったり生活資金に悪影響が生じると、ライフプラン全体に影響が出てしまいます。そうならないよう、リスクも想定したうえで予算を考えておかなければなりません。
そのためには、まずは家族のこれからのライフプランを書き出してみることをおすすめします。自分と配偶者はいつまで仕事をするか、その計画で収入はどのように変化していくか、子どもはいつごろどのような進学予定があるか、そのとき必要な費用はどのくらいになるか、親の介護はどうするか、介護費用の負担はどうなるかなどです。
このようにこれから家族がどうなっていくかを書き出してみることで、いつごろどのくらいお金がかかるかということが見えてきます。そうして浮かび上がってきた必要資金をふまえて、住宅購入の資金計画を無理のないものにしましょう。その際、「お子さんの教育費が最も大きくなる時期」を基準に考えると、より安定した計画を立てることができるでしょう。
購入できる金額を計算してみよう
住宅ローンを活用して住宅を購入する場合の代金は、まず自己資金から現金で支払う「頭金」と、購入後に毎月返済していく「住宅ローンの借り入れ金」に分けられます。この合計額が「住宅購入の予算」ということになるわけです。
頭金(自己資金)
一定の頭金をあらかじめ支払っておくことができれば、その後のローン返済もそれだけ楽になります。場合によっては、住宅ローンの優遇を受けることも可能です。
頭金については、「住宅の購入価格の1割から2割程度」を目安として用意しておくのがいいでしょう。購入時にかかる諸費用も含めると、購入価格の3割程度の自己資金を用意しておくことができるとより安心です。
とはいえ、手元の貯金をすべて頭金として支払ってしまうのは避けるべきです。住宅購入後に生活していくなかで、病気や事故といった不測の事態が起こらないとも限りません。そうしたときに貯金がゼロでは心もとなく、不安に陥ります。いざというときにすぐに使えるお金は、ある程度手元に置いておきましょう。
また、お子さんの将来や夫婦の老後のために貯蓄している分や、住宅以外にも計画している大きい買い物のために一生懸命お金を貯めている人もいるでしょう。そうしたものは頭金にあてるべきではありません。
そういった「残しておくべき金額」を貯金から差し引いたものが、「頭金や諸費用の支払いに使うことができる金額」として考えることができる金額となります。
住宅ローン
住宅ローンの借り入れをおこなうには、融資を受けることができるかどうか、金融機関の審査を受けることになります。審査ポイントとしては年齢や就業形態、収入などいくつかの項目がありますが、そのなかの1つに「年収負担率」があります。
この年収負担率とは「年間の返済金額が年収の何割になるか」を指し、収入に関する基準の1つです。一般的に、この計算には税込みの年収金額が用いられ、税込み年収の25%以内が望ましいとされています。この基準を使って年収金額から望ましい借り入れ額を計算すると、下記のようになります。
- 年収300万円の場合……借り入れ額の目安は1,880万円
- 年収400万円の場合……借り入れ額の目安は2,510万円
- 年収500万円の場合……借り入れ額の目安は3,140万円
- 年収600万円の場合……借り入れ額の目安は3,770万円
(試算条件は、年間返済金額は年収の25%、住宅ローンの金利は2%、返済期間は35年、元利均等、ボーナス時の返済追加はなし)
とはいえ、この金額はあくまで目安です。現在同じ年収の人でも、年齢や家族のライフプランなどの諸条件によって、実際に無理なく返済できる金額はそれぞれ異なります。

返済シミュレーションをしよう
前段で借り入れ額の目安を取り上げましたが、このように住宅ローンは「いくら借りられるか」で考えがちです。しかし、現実に無理なく生活していくためには、金利も含めて「いくら返せるか」で考えましょう。限度額いっぱいまで借り入れてしまうと、その後の返済がそれだけ重くなります。
もし現在賃貸住宅に住んでいて、これから住宅を購入する場合は、その家賃と同じ金額であれば今後も無理なく支払いができると考えることができます。さらに、家賃に加えて住宅購入のための貯金をしていたならば、その分も支払い可能額に加えられるでしょう。
また、購入する住宅が戸建てかマンションかによって、購入後に支払う金額が異なることにも注意が必要です。マンションを購入する場合は、ローン返済のほかに管理費や修繕積立金、駐車場代などの支払いが毎月発生します。それらを含めた額が「毎月支払う金額」になるわけです。
つまり、毎月支払わなければならないのは「住宅ローンの返済額+毎月の諸費用」です。この金額が、これまで支払ってきた「現在の家賃+住宅購入資金の貯蓄額」と同程度かもしくは少なければ、今後も無理なく支払っていくことができると考えられます。
専門家からのアドバイス
多くの方は住宅ローンを組まれると思いますので、月々の支払いが家計費にどう影響するのかを考えて予算を決められたらよいと思います。貯蓄がある人、貯蓄ができる人は多少月々の支払いが多くても何とかなりますが、貯蓄がない人、貯蓄ができない人は何かあるとすぐ住宅ローンの支払いが滞ってしまいます。頭金を入れないならなおさら、返済比率は低めに20~25%を目安とした方が良いでしょう。
なお、繰り上げ返済は金利との関係、住宅ローン控除との関係を見て判断します。金利が安く、他の使い道の方がリターンが高いなら無理して返済する必要がないでしょう。
また、住宅ローン控除の還付額は年末残高に影響されますので、借り入れから10年以内は慎重に判断したいところです。
住宅ローン設定
※
※物件価格の80%以下でお借入れの場合
※50歳以下で一般団信をご選択の場合
※住宅ローン金利優遇割適用後の変動金利(全期間引き下げプラン)
※実際のお借入日の金利により変動します。
※審査の結果によっては保証付金利プランとなる場合があり、この場合は上記とは異なる金利となります。
※別途借入金額の2.20%(税込)の事務手数料が発生します。
まとめ
住宅購入の資金計画を立てるためには、まずは自己資金やライフプランを想定して、住宅ローンの金額をより具体的にイメージするところから始めましょう。それができてきたところで、さらに資金計画を万全にしていくために、住宅ローンのシミュレーションを活用するといいでしょう。
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監修:
畑中 学(はたなか おさむ)
Profile
不動産コンサルタント・武蔵野不動産相談室株式会社 代表
1974年東京都生まれ。設計事務所にて一戸建てや公団分譲地を手掛けた後、不動産会社へ移り最年少で店長になる等、7年間にわたり不動産の販売・企画・仲介を責任者として携わる。2008年に創業。家に関する相談を約800組受け、お金の面から多くの方に満足のいく家づくりと家の買い方をサポートしている。
「不動産の基本を学ぶ(かんき出版)」「不動産の落とし穴にハマるな(同)」「マンション・戸建 中古の選び方(日経ビジネス)」「お金持ち入門(実業之日本社 不動産編)」など著書は多数。