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工務店が倒産するリスク

東京商工リサーチの調査で、2014年の全国企業倒産件数(負債総額1000万円以上)のうち建設業は前年比マイナス18.8%という結果が公表されました。この背景のひとつには、2014年の消費税増税を前にした駆け込み需要による受注増の影響があったものと思われます。

このことから、来年2017年に予定されていた消費税10%への増税がそのまま実行されていれば、今年2016年にも同様の駆け込み需要を見込むことができたかもしれません。しかし、増税の延期が決定した今、駆け込む必要がないと判断されれば、需要は当初の予想より緩やかになるでしょう。

一方で、建築資材や人件費は高騰の一途をたどっており、その実情は苦しいものがあると想像できます。また、日本の人口や世帯数は年々減少しており、新たに建築する住宅の数もそれに比例して減少していくことが予想されます。

こうした状況であることから、工務店や建築関連企業の倒産リスクは高まっていくと考えておいたほうがいいかもしれません。では、一大決心をして契約したのに、その契約相手がもし万一倒産してしまったら、契約した住宅はどうなるのでしょうか。

建築中、工務店が倒産してしまった場合

支払った手付金

まだ完成していない建売の場合、「代金の5%超(未完成の場合)」または「1000万円超の手付金」は、家の引き渡しが完了するまで金融機関や保険会社が保全措置をとっています。このため、契約が解除される場合、支払った手付金は戻ってくることになります。ただし、この金額に満たない場合は戻ってこないこともありますので、注意が必要です。

一方、注文住宅では、このような保全措置がとられることは一般的にほとんどありません。契約した会社が倒産してしまった場合、手付金は戻ってこないものと考えてください。

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家の建築が継続されるか

破産による倒産では、事業を清算してしまうため、建築や売買のために結んだ契約を継続することができず、契約は解除されてしまうことになります。倒産した工務店が契約内容の継続を引き受けてくれるところを探して、完成までこぎつける場合もありますが、多くは買い主が自分自身で建築を請け負ってくれる会社を探して契約を結ぶことになります。

同じ倒産でも、会社更生法の適用などを受けて再建を目指す会社の場合は、契約はそのまま継続されることになります。そのため、家の引き渡しを受けられる可能性は高まるといえるでしょう。ただし、倒産の報を受けて買い主側が契約解除を希望した場合は、原則として手付金は戻ってこないので、こちらも注意してください。

注文住宅の場合は、保証会社が家の完成までをサポートしてくれる「住宅完成保証制度」というものがあります。これは、契約した工務店が倒産してしまっても、その建築を引き継ぐ別の会社を紹介してもらえたり、一定の保証を受けられるものです。建築請負契約の際、制度の適用を受けられるかどうかを忘れずに確認してください。

建築後、工務店が倒産してしまった場合

家が無事完成し、引き渡しを受けてひと安心――のはずだったのに欠陥が見つかってしまったため、さっそく工務店に連絡しようとしたら、その工務店は倒産してしまっていた。こうした場合、修繕などの対応はどうすればいいのでしょうか。

新築住宅を建築・販売する会社は、責任を負う補修を確実に行えるように、保険の加入や供託金を納めることを法律で義務付けられています(「住宅瑕疵担保履行法」)。この対象となっていれば、万一その工務店が倒産してしまっていても、一定の補修費用の支払いを受けることが可能となっています。

まとめ

住宅の購入のために貯めてきたお金や建築のためにかける時間はとても大きなものです。それらが無駄になってしまわないよう、どういう制度を受けられるのか、工務店がどういう保証をカバーできるのか、契約の前にしっかり調べておきましょう。

専門家からのアドバイス

一戸建てを建築中に工務店等住宅メーカーが倒産してしまった場合は、慌てず一切金銭等を支払わないようにしてください。なかには支払ってしまう方もいますが、ほぼ戻らないことが多く、大変な思いをすることになります。その後、住宅メーカーの代理人弁護士と交渉をして早めに工事を続ける手立てを模索していきましょう。

もちろん、最初からこのような事態にならないように、請負契約前の検討や確認が大事とも言えます。注文や建売など、これから家が建ち始める場合は、請負価格の安さだけではなく、保証面も含めて検討するべきです。特に住宅完成保証制度は住宅メーカーが加入する制度ですが、経営状態なども含めて一定の審査をクリアできないと入れません。その意味では制度に入っている住宅メーカーは安心できるといえます。
支払ったお金の分、きちんと工事をしてくれる保証があるのか、そこは見極めておきたいところです。

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監修:

畑中 学(はたなか おさむ)

Profile
不動産コンサルタント・武蔵野不動産相談室株式会社 代表 1974年東京都生まれ。設計事務所にて一戸建てや公団分譲地を手掛けた後、不動産会社へ移り最年少で店長になる等、7年間にわたり不動産の販売・企画・仲介を責任者として携わる。2008年に創業。家に関する相談を約800組受け、お金の面から多くの方に満足のいく家づくりと家の買い方をサポートしている。 「不動産の基本を学ぶ(かんき出版)」「不動産の落とし穴にハマるな(同)」「マンション・戸建 中古の選び方(日経ビジネス)」「お金持ち入門(実業之日本社 不動産編)」など著書は多数。