
万全を期していても、荷物は傷つくことがある
引っ越しをする際、荷物の梱包は、引っ越し会社に依頼するケースもあれば自分でおこなうケースもあるでしょう。いずれにしても、食器などの壊れ物はエアパッキンなどの緩衝材でくるんで割れないように保護したうえで荷詰めします。
一方、荷詰めを自分でおこなうプランの場合でも、大きな家具や家電の梱包は引っ越し会社が対応するケースが多いのではないでしょうか。その際は、引っ越し会社が用意している古毛布や梱包材でていねいにガードして搬出・搬入をします。
このとき、引っ越し会社の担当者は、大事な家財に傷がつかないように、また搬出・搬入で物件に傷をつけることがないように、荷詰めも荷運びも慎重におこなうことでしょう。とくに精密なパソコンやテレビなどの家電は、壊れることがないよう相当気を配ります。したがって、引っ越しによる損傷というのはそれほど起こるものではありません。
それでも、思わぬミスが起こってしまうことはありますし、運搬時に急ブレーキや道路の障害物で衝撃を受けてしまうこともあります。その結果、家財に傷がついてしまったり、家電が壊れてしまう場合があるのです。
万一そのような事態が起こってしまった場合、どのような補償を受けることができるのでしょうか。
「約款」で補償内容を確認しておく
保険を契約するとき、旅行にいくとき、とあるサービスの会員に加入するときなど、ふだんの生活で何かの契約をおこなう際、契約を結ぶ企業から「約款」を提示・説明された経験がある方は多いのではないでしょうか。約款とは、契約内容について詳しく取り決めした内容を記したもので、その取り決めに則って契約したことが履行されます。
引っ越しも同様で、引っ越し会社は、料金の支払いや請け負う作業内容、事故が起こった場合の対応などの、契約に関するさまざまな内容を「引越運送約款」というものに定めているのが一般的です。引っ越しの過程で事故や損傷が起こってしまった場合にどのような補償が受けられるのかということも、こちらに記されています。
注意したいのは、この約款は引っ越し会社が自由に定めることができるという点です。料金が安い会社だと思って契約したら、事故の発生で受けられる補償がとても少ないものだった……そんなことも起こります。
この約款は見積もりの際に会社から利用者に対して提示することになっていますので、契約前に必ず確認しておきましょう。細かい文字で書かれていてわかりにくかったり、営業担当者の説明が概要だけといったことも少なくありませんが、事前にポイントを押さえておき、必要最低限のことはきちんと理解し納得してから契約することが大切です。
「標準引越運送約款」で補償内容を“予習”

引っ越しの場合、引っ越し会社と消費者(利用者)のトラブルを防止するために国土交通省が定めた「標準引越運送約款」というものがあります。会社によりますがこの標準引越運送約款をそのまま採用しているところも多く、そうでなくとも、この内容をベースとして各社それぞれに約款を定めています。
したがって、この標準引越運送約款をあらかじめ理解しておけば、引っ越し会社との交渉の際もあわてることなく補償内容を確認しやすくなるということです。ここからは、標準引越運送約款の補償に関する内容をいくつか取り上げていきます。
補償は引っ越し後3カ月以内
標準引越運送約款の第25条で、「荷物の一部の滅失又はき損についての当店の責任は、荷物を引き渡した日から三月以内に通知を発しない限り消滅します」とあります。「補償は引っ越し後3カ月以内」というのはここからきています。
もし万一のことがあってもきちんと補償を受けるためには、この期間内に申し出る必要があるということです。なので、引っ越しが終わった後なるべく早めに、損傷や故障がないか一通り確認したほうがいいでしょう。そこでもし損傷が見つかった場合、すぐに引っ越し会社へ連絡することです。
もしも引っ越し作業をしているさなかで、荷物に傷がついたことに気づいたら、その場ですぐに引っ越し会社の担当者へ伝えましょう。具体的な補償については後日のやりとりになることが多いので、損傷したところはカメラで撮影しておくなどしておきます。
貴重品や壊れやすいもの、生ものの補償は難しい
標準引越運送約款の第24条には、「貴重品、壊れやすいもの、変質又は腐敗しやすいもの等運送上の特段の注意を要する荷物」については、作業担当者がその存在を知らされなかった場合、そのために特段の注意を払わなかったことによる破損などについては責任を負わないとあります。
“直接”生じた損害を賠償
標準引越運送約款の第26条には、「荷物の滅失又はき損により直接生じた損害を賠償します」とあります。何をもって「直接」生じた損害となるかについては解釈が分かれることもありますが、例えばタンスに傷がついた場合、傷の修復までは補償対象となりますが、タンスの買い替えや修復実費以上の賠償金などは期待できないといった考え方です。
担当者では防ぎきれない事故などによる損傷は補償されない
標準引越運送約款の第23条には、天災や不可抗力による火災、作業担当者の過失ではない交通事故などによって発生した荷物の破損は損害賠償の責任を負わないとあります。利用者にとっては損害に変わりありませんが、引っ越し会社に責任がある損傷ではないため、その責任を問うのは難しいということです。
引越荷物運送保険に入って安心を買おう
補償内容を確認したうえで、大事な荷物はより確実に補償を受けられるようにしたい――そんな気持ちが強ければ、「引越荷物運送保険」に加入すると安心です。これは、引っ越し会社が保険会社などと提携して紹介している保険で、加入には別途費用が発生してしまいますが、引っ越し会社の約款による補償よりもより大きな範囲で補償を受けることができます。
この引越荷物運送保険にも約款がありますので、必ず約款を確認しておきましょう。一般的には1000円から2000円程度を支払えば、1000万円程度の補償を受けられる保険に入ることができます。
まとめ
どんな理由であれ、荷物が破損するような状況には遭遇したくないものですよね。信頼できる引っ越し会社を選ぶには、なるべくたくさんの引っ越し会社とやりとりをし、納得のいくところを選ぶ必要があります。引っ越し会社を慎重に選びたい人こそ、比較サイトを利用してみましょう。